抄録
【目的】小笠原諸島の基幹作物の一つであるパッションフルーツは主に生果で本土に出荷され、規格外の果実は加工に用いられている。収穫後加工までの最適な保存条件を確立するために栽培形態、収穫時期の異なるパッションフルーツを5度および25度の温度帯でそれぞれ保存し、糖度、酸度、香気成分の分析および官能評価を行い、保存温度が味および香気成分に及ぼす影響を検討した。
【方法】1) 試料 品種:台農1号、栽培形態:ハウス電照栽培および露地栽培、収穫時期:6および7月。2) 保存条件:収穫後の果実を船便(5度保存はクール便、25度保存は常温便)で輸送し、到着後は冷蔵庫および恒温器で約1カ月間保存した。3) 測定項目 糖度:糖度計を用いた。酸度:0.1mol/L水酸化ナトリウムを用い、中和滴定を行った。香気成分:果汁10gを採取後密閉し、SPME法で香気成分を捕集し、匂い嗅ぎ装置付きGC-MSで分析した。官能評価:香りの好ましさ、香りの強さ、酸味、甘味、苦味、旨味、渋味および総合的なおいしさの8項目について7段階の評点法で評価した。
【結果】糖度は5度保存では経日的にやや低下し、25度保存では顕著に低下した。酸度も同様に25度保存の方が低下した。糖酸比は経日的にやや上昇し、25度保存の上昇が大きかった。香気成分は、保存期間10日目をピークとしてそれ以降、弱くなる傾向が見られた。香りは5度保存のものではほとんど変化が見られなかった。25度保存では経日的に甘い香りや腐敗臭がするようになった。官能評価は5度保存が香りの好ましさ、酸味、総合的なおいしさで高い評価を得た。25度保存は甘味について高い評価を得た。これらのことから5度保存の方がより長く風味を保持できることがわかった。