抄録
【目的】
ダイジョ(Dioscorea alata L.)は別名アラタと呼ばれ、東南アジア原産のヤマノイモ科ヤマノイモ属ダイジョ種に分類される。自然薯に次ぐ粘質多糖類含量であるため、粘りが強い。このため、トロロの起泡性を利用した菓子への利用が期待されるが、えぐみと褐変しやすいという欠点を持つ。他のヤマノイモとの比較を行い、ダイジョの調理特性を検討するための基礎研究を行った。
【方法】
ダイジョ(切断面が白色と紫色の2種)、ツクネイモ、ナガイモ、イチョウイモを輪切りにし、切断面の褐変による経時変化をデジタルカメラで撮影した。イモの組織を走査型電子顕微鏡(日立、S‐3400N)で観察した。イモの硬さについて破断強度解析を行った。
【結果】
ダイジョは他のイモと比較して、短時間で褐変した。切断面が白いダイジョの方がより変色の進行が目立った。破断強度解析はツクネイモが最も硬く、次いでイチョウイモ、ダイジョ、ナガイモの順であった。
電子顕微鏡観察では、全てのイモに針状結晶の束がみられた。いずれも、皮の側から1 mmに密集し、2~3 mmまで存在した。皮を剥くとき、手が痒くなるのは、細胞中に埋もれていた針状結晶が飛び出して、手に刺さるためであることが判明した。水に2時間浸漬後も針状結晶は残存していたため、シュウ酸カルシウムの結晶は水に溶けないが、皮を厚めに剥くことで除去できると思われる。ダイジョはシュウ酸カルシウムが少ないにもかかわらず、えぐみがあり、褐変しやすいため、チロシンを多く含むことが考えられる。今後、お菓子への利用などを多方面から検討したい。