抄録
【目的】三宅島より新規特産品開発の相談依頼を受けた。特産品開発においては、いかに新規性があったとしても、材料の調達や初期投入に掛かる費用が高額では、実際に現地で取り入れて行くことは困難である。特産品開拓現地調査時に挙げた調査項目の中で、自生・栽培植物の有用微生物分離を目的とした部分において、今回は主要特産品であるアシタバ(Angelica keiskei)の花に付着していた野生酵母を単離、本酵母を利用した加工食品(パン)への応用検討した結果について報告する。
【方法】1)現地調査(三宅島島内、立ち入り可能区域全体)に平成23年9月8日~9月11日に入り、特産品原料素材の開拓の現地調査と自生・栽培植物(有用微生物の分離対象)のサンプル採取を行った。2)現地採取サンプル、現地からの直送サンプルより、有用微生物の単離を行った(本報告では、アシタバの花)。3)アシタバの花より有用微生物を培養分離し、生理性状(糖資化性などより)を確認の上、単離した野生酵母を用い、天然酵母パン作成を試みた。
【結果】三宅島自生・栽培植物からの有用微生物分離において、アシタバの花から分離した有用微生物(乳酸菌と酵母に着目)のスクリーニングを行い、最終的に天然酵母パン作成用に1株の酵母に着目した。地元で天然酵母パン作成に取り組む店舗があり、民宿での食事提供の一話題を視野に入れた理由である。培養条件、使用菌量検討を行い、一昨年度の研究開始時より課題としていたパンの膨らみに対する改善が行えた。また、官能検査を行った結果、仕上がった表面の焼き色のむら、断面のきめ細かさなどに関して市販のパンと比較した場合、味に対してはチーズ風味が感じられ、高評価を得た。