抄録
【目的】各地域の行事食は各地域での気候、風土、産業、文化、歴史等に培われて、伝承されている。しかし、食生活・食行動の変化に伴って食文化の伝承には変容が見受けられる。そこで、行事食の認知・摂食状況を明らかにするため、日本調理科学会特別研究として平成21~23年度に実施した「調理文化の地域性と調理科学-行事食・儀礼食-」の調査から得られた行事食「春分の日」「端午の節句」の行事食の実態を調べることを目的とした。【方法】当学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を用いて調査を行い、広島県に在住する大学・短期大学の学生およびその家族等を対象は、広島県の地域間および世代間の比較を行うため、地域は安芸地域(西部)と備後地域(東部)とし、年代は10~20代の学生と30代以上の一般として大別し、学生268名、一般365名、計633名とした。解析にはエクセルを用いた。【結果】調査対象者のうち認知状況をみると、「春分の日」・「端午の節句」ともに90%以上の者が行事を認知していた。安芸地域(西部)と備後地域(東部)との違いはみられなかった。また、行事および喫食の経験をみると「春分の日」の行事では学生の方が低く、「端午の節句」では学生の方がより高い割合であった。また、「ぼたもち」「ちまき」「柏餅」を家庭で作ると答えた割合はともに低かった。行事の認知度は高い割合であったが、現在、行事食を「家庭で作る」と回答する割合は以前に比べ減少していた。