【目的】近年は、食品産業の発達により食の外部化が著しく、生活様式が変化して手間をかけた伝統的な行事食が親から子へ伝承されない傾向にあるといわれている。本研究は、平成21、22年度の日本調理科学会特別研究として実施した全国行事食調査から、近畿の他府県に比べて祝うことの多かった行事食の春祭りと正月料理に着目して新たにアンケート調査を行い、滋賀県在住の短期大学生の家庭における行事食の現状を把握し、今なお地域に伝え作られている滋賀県の正月料理と春祭りの食事の存り様を明らかにすることを目的とした。
【方法】平成21年12月~平成22年3月、日本調理科学会特別研究の全国統一様式の調査用紙を使用し、近畿2府4県の大学・短期大学に在籍する学生及びその親、その他近畿在住者を対象にアンケート調査を行った。そのうち、滋賀県の特徴が認められた行事食の正月料理と春祭りについて平成24年12月~平成25年1月、滋賀短期大学学生148名の家庭にアンケート調査を行った。
【結果】正月料理を手作りする短期大学生の家庭は61%であり、比較的多い傾向にあった。滋賀県の正月料理や祝い事に欠かせない棒だらと里芋の煮物を入れる家庭は28%、ふなずしを食べる10%、その他ねごんぼ、柿なます、えび豆、たけのこの煮物に特徴がみられた。近畿の中で祝うことの多かった春祭りだが、学生家庭で祝うことは少なかった。祭りのごちそうは、散らしずし、さばの棒ずし、いなりずし、巻きずしなどであった。核家族化が進み行事食の伝承力が弱くなっている中、親戚縁者の集う正月や祭りごとの機会を逃さず行事食や地域の食事を親から子へ伝承していくことが重要であると考える。