抄録
【目的】干し野菜は独特な歯ごたえが生まれ,味が染み込みやすく,調理時間が短縮できると考えられている。そこで本研究では,干し野菜としてよく用いられるダイコンについて3日間の天日干しを行い,抗酸化性や歯ごたえ,味の染み込みやすさに対する影響を検討した。またカルシウム(Ca)量の変化についても検討を加えた。
【方法】ダイコンは5mm厚の輪切りにし,セルクル(直径6.5cm)を用いてくりぬいた。干しネットに入れ,南側のベランダで6時間乾燥を3日間繰り返した。干したダイコンについて水分測定,破断測定を行い,エバンスブルー染色により植物細胞の状態を調べた。ラジカル捕捉活性はDPPH吸光度法,還元糖量はSomogyi-Nelson法,Ca量は原子吸光度法で測定した。各項目とも生,1日干し,2日干し,3日干しの変化を測定した。
【結果】破断特性では破断応力が生<1日干し<2日干し<3日干しの順で大きくなった。生死染色では,生から3日干しにかけて死細胞の割合が増加した。ラジカル捕捉活性は1日干しから3日干しにかけて増加したが,還元糖量は,生から3日干しにかけて減少した。Ca量は生から3日干しにかけて増加した。干した日数が長くなるほどダイコンの表面が褐変化しアミノカルボニル反応が起こっていると考えられた。これらの結果より,干しダイコンは経時的に硬くなる一方で,味は染み込みやすくなると考えられた。