日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成26年度(一社)日本調理科学会大会
セッションID: 2B-a5
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口頭ー発表
石川県内における金沢縁起菓子の地域分布について
*辻 昌美真部 真里子
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キーワード: 和菓子, 金沢, 石川県
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抄録
【目的】金沢市に伝わる5つの縁起菓子、すなわち、正月の「福梅」、7月1日の氷室の日に食べる「氷室万頭」、ひな祭りの砂糖菓子「金花糖」、婚礼の道具入れや建前の日に配られる「五色生菓子」、8月の田休めの餅「ささぎ餅」について、県内での製造・販売状況を調査し、金沢の伝統的な和菓子文化が周辺地域にどのように影響しているかを検討した。【方法】金沢市以外の石川県菓子工業組合(以下、組合)に所属する和菓子店、計34店を対象に、上記5つの縁起菓子の製造・販売について検討した。支部長店には自店と支部所属店について質問紙調査を、その他の店には聞き取り調査を実施した。聞き取り調査では、製造・販売があった場合には、菓子の詳細、使用用途等も合わせて調査した。【結果】福梅は県内全域で製造販売されていた。これは、正月は行事実施率が高く、福梅に替わる正月菓子がなく、また登録商標権による制限もないためと考えられた。氷室万頭は奥能登の一部を除きほぼ製造されていた。平成以降、組合による普及活動で能登地方へ広がったが、能登での定着は希薄であった。金花糖は、加賀地方のみで能登地方にはほとんど見られなかった。現在砂糖は貴重品ではなくなってきたため、加賀地方でも衰退傾向にあった。五色生菓子、ささぎ餅は能登地方と加賀市ではほとんど見られなかった。能登地方は米の生産量が少なく、加賀市は江戸時代政治経済状況が厳しく嗜好品に食材をかける余裕がなかった、また近年菓子が用いられる行事習慣が簡略化したことが原因として考えられた。以上の結果から、行事と食が一体となって伝わらないと定着しないとわかった。縁起菓子の伝播と定着には、その背景の行事や謂れも次世代に伝わることが必須である。
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