抄録
目的】 国家レベルで食の学びを推進することは今や世界の潮流となっている。なかでも調理技能を習得することは必須の技能として食生活を営む能力の中心とされ、調理実習を含めた食教育が実践されるようになっている。本研究では2014年より小中学校6-9年のうち1年間に必修科目Food Knowledgeを設定したデンマークにおける食教育について、とくに革新的なとりくみとして注目を集めているFood Fightを対象とし、現地での観察調査を踏まえて、innovativeな取り組みについて分析的に検討する。 【方法】 デンマークで行われている中学生の食に関するコンクールFood Fightの、HP掲載内容,教師向け・生徒向け資料をもとに概要を把握し、現地での観察聞き取り調査結果もあわせて、このコンクールの意義について検討する。 【結果】 Food Fightはデンマークの家庭科関係者が中心となり全国の取り組みとして2012年から始められた。このコンクールは単に料理の出来栄えを競う場ではなく、通常の食生活学習を探究的に行い、その成果を発表する場である。Food Fightではテーマ(2016年はMilk and Chemistry)となった食材を用いて創意工夫された料理が並び、審査員は研究内容や料理に関するプレゼンテーションを聴きながら試食し評価するという方法がとられていた。コンクールでの調理活動は研究成果を具現化する活動であり、出来上がった料理はプレゼンテーションを行うためのツールであった。このコンクールに至る生徒の主体的な取り組みとそのプレゼンテーションが本コンクールのinnovationの中心であると考えられる。