日本調理科学会大会研究発表要旨集
平成28年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 2D-p1
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口頭発表
千葉県郷土食「性学もち」に関する研究
*大河原 悦子高梨 萌阿部 愛波中島 肇柳澤 幸江龍崎 英子
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抄録


【目的】】千葉県の東総地区(現在旭市)に江戸時代から伝わる粳米を用いた独特の製法で作られる性学もちがある。本研究は、粳米で作る性学もちが餅に比べ付着性が低く飲み込みやすいと言われている点に着目し、その性質及び物性を分析し飲み込みやすさを科学的に検討した。高齢者向け食品開発として、また、千葉県郷土食の伝承と米消費拡大という側面からの活用も目的とした。

【方法】咀嚼機能の観点から女子大生による性学もちと市販切餅の官能評価検査及び
 .XTplusTEXTUREANALYAER(StableMicroSystens)を用いて性学もちと市販の切餅の硬さ・付着性・凝集性を測定し性学もちの郷土食歴史的背景の観点から地域住民による認知度アンケートを実施した。

【結果】官能評価検査では、市販の切餅に比べ飲み込みやすいという項目で有意な差がでたが、おいしさについては差がみられなかった。テクスチャーアナライザー分析した結果、硬さと付着性には、性学もちと切餅には有意な差はみられなかった。一方、見かけの凝集性は性学もちには切餅には統計的な有意な差がみられた(p<0.05)。この結果から、性学もちは市販の切餅と比較して飲み込みやすいことが示唆された。一方、郷土史研究の視点から、千葉県市川市民10~70歳代(n=181)の認知度アンケート調査を行った所、性学もちを知っていると答えた人は全体の5.5%と低くかった。江戸時代の道学者大原幽学が考案した性学もちは農民の困窮生活の中で餅文化への強い信仰心から誕生した。大原幽学の特異かつ不幸な歴史的背景から性学もちに関する資料は少なく、認知度の低さにつながるのではないかと推察される。
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© 2016 日本調理科学会
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