日本調理科学会大会研究発表要旨集
2019年度大会(一社)日本調理科学
セッションID: P-k12
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特別企画 次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理 ポスター発表
茨城県の家庭料理 副菜の特徴
*飯村 裕子荒田 玲子石島 美恵子渡辺 敦子粟津原(野口) 元子
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抄録

【目的】日本調理科学会特別研究会「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の茨城県の調査地域である5地域において昭和30〜40年代に副菜として食されていた中で特徴的なもの8品を報告する。

【方法】県内5地域(県北,県央,県西,県南,鹿行)において平成24年〜26年度に聞き書き調査を実施した。その調査から分かった地域ごとの副菜の特徴について検討した。

【結果および考察】県北の北茨城市には平潟と大津の2つの漁港があり,平潟ではアンコウ(鮟鱇)を底曳網漁で,大津ではイワシ漁が盛んであった。現在ではともに漁獲量は減少してしまったが,平潟では初午に「鮟鱇の共酢和え」を,大津ではイワシの水揚げの増える秋になると「卯の花漬け」が供されている。

県央は畑作が農業の中心であり,夏は,茄子を味噌で炒めた「茄子のしんやき」が定番のおかずであった。料理名は,「鍋しぎ」から派生したとも考えられる。冬は,根菜類が豊富で,「煮和え」が人寄せの際に供されていた。せん切りの人参,牛蒡や白滝を炒め煮にし,仕上げに酢を入れるのが特徴である。

県西の結城市には麩に塩をまぶしてゆでて干した「すだれ麩」があり,「すだれ麩のごま和え」が冠婚葬祭時など人の多く集まる時に食べられていた。

県南の石岡市では,県西の行事食すみつかれの流れを汲むと思われる「酢むつかれ(煮なますとなますの2法がある)」,土浦市では,霞ケ浦での漁が盛んであり,そこで獲れたワカサギを使った「ワカサギの煮干し」が食べられていた。

鹿行の鹿嶋市では,霞ヶ浦でとれる小魚の酢漬けを加えた「がりがりなます」が,現在でも食べられている。鬼おろしで卸した大根,人参が,みずみずしい独特の触感と味わいを創出している。

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