主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2019年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 中村学園大学
開催日: 2019/08/26 - 2019/08/27
【目的】製餡工程において小豆の煮熟は最も重要な工程であり,餡の歩留まりおよび品質に大きな影響を及ぼす。豆は産地や気候条件により性質が大きく変わる作物であるため,煮えにくいものもあり,煮熟促進剤として重曹やポリリン酸塩が使用される。重曹等の使用により煮熟が短時間になる一方で,小豆の風味が損なわれたり,渋きり液に栄養素が流出したりするという課題がある。渋きり液は水溶性タンパク質や可溶性デンプン質等の有機物に富み,排水に負荷がかかっている。特異的に植物中のセルロースを分解する酵素であるセルラーゼは煮熟促進剤としての効果が期待されるが,セルラーゼを小豆の煮熟に用いた報告は少ない。そこで本研究では,小豆の煮熟促進剤としてセルラーゼを用いることによる小豆の性状変化や渋きり液の栄養素の評価等を行った。
【方法】重曹,セルラーゼ(CelluclastR:ノボザイムズ社)を天津小豆に対して1%添加し,小豆に対して300%の加水を行い,2回の渋きり工程を伴う煮熟を行った。得られた小豆については破断強度測定により硬さを,官能評価により小豆の風味を評価した。また,得られた渋きり液については性状として着色度,pHを,渋きり液中に溶出した栄養成分として液中のタンパク質量を,排水負荷の指標として残渣の量を測定した。
【結果および考察】酵素添加区は無添加区に比べ小豆の軟化が顕著であり,小豆の風味は重曹添加区よりも風味を強く残し,無添加と同等の評価であった。酵素添加区の渋きり液は重曹添加区と比較し着色が少なく,ポリフェノールの流出が低減されていると推測された。また,渋きり液中の残渣の量も少なく,重曹添加区に比べ渋きり液中の有機物が有意に低下することが示された。