日本調理科学会大会研究発表要旨集
2019年度大会(一社)日本調理科学
セッションID: 2C-4
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口頭発表
油脂の劣化指標とフライ食品の喫食前後の香ばしさの関係
*柿本 健一岡本 裕樹木村 功多田 早希井上 賀美
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抄録

【目的】香ばしさはフライ食品のおいしさに寄与する重要な要素である。フライ油の廃油基準は「弁当及びそうざいの衛生規範」で定められており,酸価,カルボニル価,発煙点が指標として用いられている。しかしながら,廃油基準に未達の油で調理されたフライ食品であっても,香ばしさを感じ難い場合がある。本検討では,フライ食品のおいしさとの関連が深い香ばしさに着目し,香ばしさと相関のある油脂の劣化指標の推定を行った。

【方法】劣化度の異なる油でとんかつを揚げ,専門パネルによる官能評価により喫食前と喫食中の香ばしさの評価を行った。評価方法は100 mmスケールのVAS法による記述分析とした。また,調理に用いた油脂の分析を基準油脂分析法に従い行った。その後,相関分析にてとんかつの香ばしさと関係のある劣化指標を推測した。

【結果および考察】官能評価の結果,食前と喫食中の香ばしさとの間に正の相関を示したが,一部サンプルの乖離がみられた。そこで,喫食前の香ばしさと油脂の劣化指標で相関分析を行ったところ,相関は確認されなかった。一方,喫食中の香ばしさと油脂の劣化指標では,極性化合物量とカルボニル価で二次関数的な関係がみられた。つまり,喫食中の香ばしさを引き出すには,油脂状態の適正な管理が重要であることが示唆された。以上より,「弁当及びそうざいの衛生規範」で定められた指標に極性化合物の指標を加えることで香ばしいフライ食品を提供できる可能性があると考えている。

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