【目的】干菓子は和菓子の一つである。和菓子は製法や材料,道具などにより分類される。和菓子の製法は,ほぼ手だけで形づくる「手形もの」と,菓子型を用いて成形する「型もの」の2つに大別され,干菓子は主に後者の製法により作られる。干菓子の一つに打ち物がある。打ち物は,菓子型(木型)に材料をつめて成形・打ち出したもので,繊細で精密な細工を特徴とする。打ち物は,色彩・形状・季節感を多様に表現するとともに,年中行事や人生儀礼においても用いられるため,我が国にとって重要な食文化といえる。一方,近年,和菓子離れの傾向にあり,打ち物の喫食機会の減少や打ち物に対する理解・認知の低下が考えられる。本研究では,材料が打ち物の物理特性に及ぼす影響を検討するとともに,3DCADおよび3Dプリンタを用いて打ち物の菓子型を製作し,食文化理解のための教材作成の一助とすることとした。
【方法】干菓子(打ち物)の製法と意匠に関する文献調査を行った。加えて,米粉の種類と配合を変えて打ち物を調製し,その物理特性を測定した。菓子型の製作では,3DCADソフトを用いて,花弁の切り込みの深さや花弁の幅を変えて型のモデリングを行い,3Dプリンタを用いて型を製作した。
【結果】打ち物の副材料の一つである米粉について検討した。米粉の種類や添加量によって,打ち物の硬さは有意に変化した。このことから,副材料が打ち物の物理特性や食嗜好性に影響を及ぼすことが示唆された。打ち物の抜きやすさについては,型の形状と副材料(米粉)の配合に関連が見られた。