主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2021年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 実践女子大学 日野キャンパス
開催日: 2021/09/07 - 2021/09/08
【目的】行事や行事食はその土地や環境に根付き今日まで受け継がれてきているが,地域独自の行事食などの伝承機会が薄れているという指摘もある。そこで,比較的実施率の高い正月の行事・行事食について,経験や喫食状況を調査し,岩手県にある栄養士養成課程の学生の実態を把握するため,他地域の同年代と比較検討することを目的とする。
【方法】調査対象者は短大栄養士養成課程に在籍し,本学99名,神奈川県150名である。質問項目は,出身地,家族構成,餅やおせち料理の準備とその内容,大晦日等の食習慣である。本学学生には担当教員の授業等内で配布・回収,神奈川県は郵送し,配布・回収ののち返送してもらった。
【結果】経験のある行事は,「正月」や「大晦日」が両県とも90%以上だった。「鏡開き」は岩手県31.3%,神奈川県36%,「小正月」は岩手県44.4%,神奈川県66.7%だった。雑煮やおせち料理の喫食経験について,「雑煮」は両県90%以上,「おせち料理」は岩手県84.8%,神奈川県99.3%だった。大晦日の「年越しそば」は両県90%以上だった。人日の「七草粥」は岩手県42.4%,神奈川県64.6%だった。餅の準備は購入が最も多く,次いで家でつくだった。おせち料理は手作りと購入の併用が最も多く,次いで手作り,購入の順だった。おせち料理で出現頻度が多いのは順に黒豆,紅白かまぼこ,数の子,伊達巻き,栗きんとんだった。雑煮には両地域とも餅の形や調味に地域性が現れている学生が多く,食文化が残っていることがうかがえた。その一方で都市部に近い大学に在籍する学生と比較し,岩手県の学生の方が行事の体験や行事食の喫食経験が少なかった。また,行事食が根強く残っている家庭も僅かながらある一方で、画一的・簡素化の傾向が見られた。