【目的】加熱野菜(煮物)は固体に液体が分散したコロイド食品であり,その嗜好特性は加熱後も変化すると考えられるが,保存,再加熱過程の嗜好特性変化に関する研究はなされていない。本研究では,保存,再加熱過程の加熱野菜の体積,水分量,テクスチャー変化を加熱調味の影響も含めて把握し,嗜好特性への影響を検討した。
【方法】2.5cm角の大根,人参,じゃがいも,茄子を沸騰させた蒸留水あるいは調味液(砂糖5%,塩2%)で30分加熱した。その後,加熱溶液中で一晩保存し,再加熱を行った。重量,体積は1試料ずつ測定し(ボルスキャンVSP300),水分量は3試料ずつでホモゲナイズして水分計で測定,内部(2cm角)のみの測定も行った。破断強度はくさび型プランジャーで繊維に直角に15mm(茄子は12mm)の圧縮で測定した。さらに,内部と外部にわけた試料のNa量も測定した。
【結果】重量および水分量は大根,人参では水加熱,調味液加熱のいずれでも減少,保存で増加,再加熱で減少した。体積は加熱,再加熱では重量,水分量と同様に減少したが,保存では増加しなかった。じゃがいもでは,加熱時の重量減少が生じず,体積減少も小さかった。なすでは水加熱で重量,水分量はほぼ変化せず,調味液加熱では減少,体積減少が著しかった。破断強度は調味液加熱での保存,再加熱による低下が大根で著しかった。Na量はいずれの野菜でも外部は加熱,保存,再加熱時に増加,内部は保存時に大きく増加した。これらから,加熱時に野菜の水分は溶出し,保存時に加熱溶液の流入で増加すること,保存時の重量増加と体積増加は必ずしも一致しないこと,野菜内部のNa量はいずれの野菜でも保存時に増加し,調味液加熱で保存時の破断応力の低下が著しいことが示された。