日本調理科学会大会研究発表要旨集
2021年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: 1B-8
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口頭発表
カリンエキスゼリーの特性および赤色着色に関する研究
*富澤 歩美阿部 雅子高梨 美穂長井 祐子小林 亘小澤 好夫綾部 園子
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抄録

【目的】カリン果実は豊かな芳香を持つ果実であるが, 果肉が硬く強い渋みを持つため生食には向かず, 果実酒やはちみつ漬け, ジャム類(JAS規格におけるゼリー)として利用されている。カリンエキスゼリーは果実をアク抜きして熱水抽出したカリンエキスに砂糖を加え加熱すると美しい茜色に着色するが, その特性や茜色を呈する成分について不明な点が多い。そこで本研究ではカリンエキスゼリー(CJ)の物性と茜色への着色について検討した。

【方法】カリン果実から熱水抽出したカリンエキスのペクチン量をカルバゾール法で測定した。CJはカリンエキスに果実質量30%(w/w)のスクロースを加え糖濃度50%(w/w)まで煮詰めて調製し, 色と物性および糖組成の変動とポリフェノール含量の測定をした。さらに, エキスのペクチンを除いた除ペクチンエキスと, それにスクロースを添加・加熱した除ペクチンCJエキスを調製し, 樹脂(アンバーライトXAD-7)の吸着画分と非吸着画分に分離した。各試料の色とポリフェノール含量の測定をした。

【結果】エキスのペクチン量は170.1 mg/100g(FW)で, その98%は水溶性ペクチンであった。CJはゲル化し, 物性はヨーグルトに近い値であったが, 加熱したエキスと除ペクチンエキスはゲル化しなかった。a*値は, CJで高く, 除ペクチンCJ吸着画分はさらに高かった。エキスに加えたスクロースは, 加熱中経時的に減少し, グルコースおよびフルクトースが増加した。エキスの総ポリフェノール量は1668 mg/100g(FW)であった。画分別では除ペクチンCJ吸着画分で最も多く, 非吸着画分で最も少なかった。除ペクチンCJ吸着画分でポリフェノール量が多く, a*値も高いことから, 茜色着色とポリフェノールの関係が示唆された。

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