日本調理科学会大会研究発表要旨集
2021年度大会(一社)日本調理科学会
セッションID: P-k20
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特別企画 次世代に伝え継ぐ 日本の家庭料理 ポスター発表
石川県の家庭料理 行事食の特徴
−信仰と武家文化の流れ−
*新澤 祥惠川村 昭子中村 喜代美
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抄録

【目的】石川県における行事食の特徴あるものを検討した。

【方法】平成25〜27年に実施した「次世代に伝え継ぐ日本の家庭料理」の聞き書き調査(穴水町、金沢市、野々市町、白山市、小松市、白峰村)及び文献等により検討した。

【結果】1)「あえのこと」は田の神様に感謝をするものとして能登一帯で今も行われている行事で地域の季節の食材で調理された料理が用意され、田の神様をもてなした後、家族の直会が行われる。 2)「報恩講」は浄土真宗の行事であり、多くは小豆汁が用意されるが、白峰村ではなめこ汁が作られ、これに、大盛りのごはんと厚揚げ、堅豆腐や山菜などを使った精進料理が用意されている。 3)「祭り」の料理としてえびすがあり、金沢、加賀では塩魚を使った押しずしが作られた。 4)「婚礼」の料理として鯛に炒りおからを詰めて蒸した唐蒸しがある。特に婚礼では大鯛を一対腹合わせに盛り付けて供される。また、五色生菓子が準備される。これは、日・月・山・海・里にみたてた5種の菓子を近所や親戚に配るものであるが、徳川家より玉姫が輿入れした題に献上されたものといわれる。 5)「氷室」は江戸時代、冬に雪を氷室に貯蔵し、旧六月朔日に氷室を開きこれを江戸の将軍家に届け、庶民はこの時期収穫される麦で饅頭を作ったという故事にちなみ、現在は7月1日に白、赤、緑の饅頭やはぜ、ちくわを食べている。 6)正月の雑煮は能登、金沢、加賀で差異がみられる。おせち料理で地域性のあるものとしては、棒だらの煮付け、ぶりなます、鮒の甘露煮があり、能登ではあいまぜも準備される。正月菓子としては前田家の家紋梅鉢にかたどった紅白の最中に砂糖をまぶした福梅(ふくんめ)や福徳がある。 以上、石川県では、信仰にちなんだ行事と武家文化に影響された行事食がみられた。

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