主催: (一社)日本調理科学会
会議名: 2021年大会(一社)日本調理科学会
開催地: 実践女子大学 日野キャンパス
開催日: 2021/09/07 - 2021/09/08
【目的】2010年「行事食・儀礼食」の調査では、ひな祭り(上巳)の認知率は94.8%、寿司や餅・菓子の喫食経験は70%以上で継続されている行事といえる。そして、徳島にはひな祭りには欠かせない遊山箱がある。そこで、ひな祭りと遊山箱の特徴について報告する。
【方法】2010年「行事食・儀礼食」調査、2013年家庭料理聞書調査、2013年遊山箱に関するアンケート調査、2020年和食アンケート調査、文献よりまとめた。
【結果・考察】ひな祭りは、昔は4月3日(旧暦の3月3日)に行われていたが、現在では3月3日に行うのが一般的である。一方、海陽町(宍喰地域)では従前から「八朔の雛祭」として旧暦の8月1日に行われている。徳島では子供が生まれると男の子も女の子も遊山箱を与えられる。遊山箱とは引き出し式の三段重ねの重箱で、ひな祭りの日には寿司や菓子を詰めて近くの浜や野山に出かけて食事を楽しんだ。アンケート調査(自由記述から抽出n=55)から、上段には寿司類(出現頻度53%)、または菓子類(寒天・ういろう等)(33%)、中段にはおかず(煮染め等)(78%)、または菓子類(16%)、下段には菓子類(53%)、または寿司類(46%)が詰められていた。2020年の調査(n=578)では遊山箱を「子供の頃使ったことがある」は全体で9.9%であるが、60歳以上では71.4%、50歳以下では6.7%であったことから昭和40年頃までは多くの者が使用していたと推測される。「名前は知っている」は58.8%、「知らない」は31.3%であった。また、端午の節句にも使用したとの記述もあり、子供の行事に遊山箱が使用されていたことがうかがえた。このように遊山箱は、主に60歳以上の多くの県民の共通の思い出として残っている。