【目的】山梨県は周囲を1000 m級以上の山に囲まれ、日較差が大きく、夏は高温、冬は冷涼な地域が多い。稲作に適した土地が少ないことから、麦やいもなどの畑作や果樹栽培が主である。山梨県の家庭料理には小麦粉を中心とした主食やおやつ類、いも類の煮物に特徴が見られることから、穀類、いも類の調理を中心に果実類の加工品についてもまとめた。
【方法】「次世代に伝え継ぐ家庭料理」のガイドラインに沿い、昭和30~40年代の家庭料理について平成25~27年に行った山梨県の聞き書き調査、文献調査及びアンケート調査1)を中心にまとめた。
【結果・考察】山梨県では小麦粉を用いたほうとうやうどん、大麦を米飯に混ぜた麦飯を主食としてきた。特にほうとうは小麦粉に食塩を添加しないため、ねかし時間が短く、幅広の麺を直接汁で野菜類等とともに煮るため、調理が簡便で農作業で多忙な毎日の「ケ」の食事として多くの家庭で食べられていた。現代でも寒い時季の日常の夕食として食べられており、市販麺の利用が受け継がれてきた要因の一つと考えられる1)。
おやつとしては、小麦粉やもろこし粉を用いたうす焼き、まんじゅう、だんごや、さつまいも、じゃがいもを用いるものが多かった。なかでも、小いもを用いるじゃがいもの煮物はおやつだけでなく副菜としても食され、各地にその例が見られた。このような穀類やいも類の調理が山梨県の家庭料理の特徴と考えることができる。
さらに、ぶどうを代表とする果樹栽培は、戦後、日照時間が長く水はけのよい地域の主な産業となっており、ぶどう、もも、かき、うめなど、栽培農家を中心にその加工品が家庭料理の特徴となっている。
1)松本美鈴他:日本調理科学会平成30年度大会研究発表要旨集1B-4 (2018)