日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1P-37
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ポスター発表
石川県におけるいわし料理の地域性
*新澤 祥惠川村 昭子中村 喜代美
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抄録

【目的】いわしは大衆魚として焼魚,煮魚,刺身等に調理されるが,石川県では,塩煎或いは湯煮と称し,いわしや小いわしを塩ゆでし,生姜を添えて酢醤油で食べる料理が広く普及していた。また,当県は,いわしの漁獲量が多く,また,消費量も他地域に比べ多いことから,いわし料理の地域性や位置づけについて検討した。

【方法】「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の地域性-」,「伝え継ぐ 日本の家庭料理」 の調査,公的統計資料,料理本,市町史等の文献調査,若年者と高齢者対象のアンケート調査を用いた。

【結果】1)まいわしの漁獲量では,1950年代上位(10位以内)にあり,2010年代も上位にある年が多い。また,消費量については北陸地区の中でも高く,直近の3年間,47都道府県中2~7位である。2)1984年~2004年に刊行された料理書に掲載されたいわし料理には,ゆで調理はみられなかった。3)平成15~16年「調理文化の地域性と調理科学-魚介類の地域性」の,東海北陸地区の比較では,いわしの利用世帯率やいわし料理の出現数は7県中最も多く,また,本県でみられたいわしのゆで調理も他県では殆どみられなかった。3)1976~2001年にかけて発刊された市町史には生業や食生活で,いわしに関する記述が多くみられた。4)地域の料理書や生活書等にいわしのゆで調理が取り上げられていた。また,聞き書調査でもいわしのゆで調理が上げられた。5)高齢者を対象としたアンケート調査では,多くが子どもの頃から現在も塩煎り(または湯煮)を喫食しているが,若い世代では殆ど喫食経験がなかった。以上,当県においていわしの位置づけは高く,またゆで調理は地域特有の料理であると考えた。

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