日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2P-4
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ポスター発表
香酸柑橘「阿波すず香」から分離した酵母Saccharomyces cerevisiaeの製パンへの利用
*大草 千晴西尾 珠生村上 芽生高田 麻衣西岡 美優庄野 久美子渡邉 幾子岡崎 貴世
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抄録

【目的】阿波すず香は,スダチとユズの交配で得られた新品種の香酸柑橘である。スダチとユズの中間の大きさと香りを有し,まろやかな酸味と,皮に苦み等がない特徴を持つ。近年,地産地消の推奨やSDGsの観点から地域特産品の利用が進められていることから,阿波すず香から分離した酵母を用いた製パンを試み,徳島県産香酸柑橘利用の可能性を検討した。

【方法】製パンは中種法で行った。YM寒天培地で35℃,72時間培養して得られた酵母を滅菌水に懸濁し,小麦粉,水と混捏して培養を行い,中種を得た。試作食パン(阿波すず香パン)は,比容積,水分量,色調(L*a*b*値),GCによる匂い分析,クリープメーター((株)山電)による物性の測定を行った。比較として白神こだま酵母で調製した食パン(白神こだまパン)を用いた。

【結果・考察】製パン方法は,①中種の調製:小麦粉210 g,水195 mL,酵母懸濁液15 mLを混捏後,35℃,5時間,②一次発酵:25℃,18時間,③ベンチタイム:20分,④成型,⑤二次発酵:40℃,2時間,⑥焼成:190℃,15分に決定した。阿波すず香パンは,白神こだまパンより比容積が小さく,水分量は43.40±0.45%であり,一般的な食パンより高い値を示した。パンの色調は,内相(クラム)に有意な差は認められず,外相は白神こだまパンに比べL*値が小さく暗い色調と評価された。クラムの匂いは,エタノールが多くを占め,次に3-メチルブタノールと考えられる物質が検出され,白神こだまパンと異なっていた。阿波すず香パンは,かたさ荷重と付着性が有意に高く,噛み応えがあり,モッチリとした食感のパンであることがわかった。

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