日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 2P-24
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ポスター発表
蒸しカボチャの組織構造
*佐藤 靖子
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キーワード: 蒸す, カボチャ, 組織構造
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抄録

【目的】カボチャは,「揚げる」,「蒸す」,「茹でる」など様々な調理法により美味しく食される野菜である。その調理法の1つである「蒸す」を行った際に,表皮の置き方の違いにより甘さが異なった。本研究では,カボチャの表皮を上下方向に置いて蒸した時の組織構造を調べた。

【方法】材料には,市販の国産カボチャを用いた。カボチャは約3 cm角に切り出し,表皮を下向きおよび上向きに置いて20分間蒸したものと,同様に切り出したものを20分間茹でたものを使用した。加熱後は,5 mmの厚さに切り出しカルノア液で固定後,パラフィンに包埋して6 µmに薄切した。薄切試料は,過ヨウ素酸シッフ液(PAS)を用いて染色し,光学顕微鏡および簡易偏光装置により観察した。

【結果】加熱したカボチャの表皮部位にデンプンの存在は確認できなかった。内部には糊化したデンプンが存在した。表皮を上にしたカボチャの内部には,糊化した多くのデンプンが存在して,崩壊したものは少なかった。しかし,表皮を下にしたものは,デンプンの多くは溶解しており,膨潤した形状のものはほとんど存在しなかった。一方,茹でたカボチャには,糊化したデンプンが存在したが,その形状は同一ではなく崩壊しているものも多かった。さらにデンプンの存在は,表皮を上にして蒸したものより少なかった。簡易偏光装置を用いた細胞壁の状態は,茹でたものと表皮が上のものでは差がなかったが,表皮を下にしたものは,表皮部位の偏光性が弱く,内部の細胞壁の形状が他と異なっていた。カボチャを蒸す際には,表皮が上なるように配置することで,内部のデンプンが十分に膨潤・糊化してその形状を保ち組織内にとどまるため,表皮を下にしたものより美味しく食することが出来うる。

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