日本調理科学会大会研究発表要旨集
セッションID: 1P-31
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ポスター発表
液体塩こうじに含まれるデフェリフェリクリシンによる畜肉調理時のヘキサナール生成阻害
*白井 伸生戸所 健彦石田 博樹山本 英作
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抄録

【目的】塩こうじは米麹と食塩を混合し熟成させた日本の伝統的な発酵調味料であり,液体塩こうじ(ESK)はハナマルキ(株)の独自製法により開発した液体タイプの塩こうじである。ESKは畜肉及び魚類の不快臭に対するマスキング効果を有し,その成分である有機酸や糖が関与していると推測していたものの,メカニズムについては詳しく調べられていなかった。近年,麹菌Aspergillus oryzaeが生産する環状ペプチド デフェリフェリクリシン(Dfcy)が畜肉の不快臭原因物質であるヘキサナールの発生を抑制することが示された*1)ことから,本研究ではESKが有する不快臭に対するマスキング効果へのDfcyの関与を検証した。

【方法】ESKに含まれる塩分濃度の食塩水をcontrolとした。グルコース,クエン酸及びDfcyをESKに含まれる濃度となるようにcontrolに添加したサンプルを調製した。各サンプルを豚挽肉重量に対し10%添加し混ぜ込み,4℃で2時間保管した。その後,スチームコンベクションオーブンを用いて180℃で10分間加熱後,官能評価により畜肉の不快臭を評価した。次に各サンプルで処理した豚挽肉のヘキサナール発生量をGC/MSにて測定を行った。

【結果】官能評価の結果より,Dfcyサンプルが最も畜肉の不快臭を抑制し,次にグルコースサンプルが効果を示した。一方でクエン酸サンプルには不快臭の抑制効果が見られなかった。また,GC-MS分析でもDfcyサンプル処理によりヘキサナールの発生量を減少させることが確認できた。以上の結果より,ESKが持つ不快臭のマスキング効果にはESKに含まれるDfcyが大きく関与していると推察された。

*1)戸所らJ. Food Process. Preserv. 2021

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