主催: 一般社団法人日本調理科学会
会議名: 2025年度大会(一社)日本調理科学会
回次: 36
開催地: 東海学園大学
開催日: 2025/08/30 - 2025/08/31
【目的】米粉の利用拡大により、自家製粉を可能とする小型湿式気流粉砕機の導入が農家や直売所を中心に進展している。これにより、乾燥工程を省いた未乾燥米粉の活用が広がりつつあるが、その製パン性に関する知見は乏しい。特に、水分含量の高い未乾燥米粉においては、加水設計や生地特性の制御が困難となる可能性がある。そこで本研究では、湿式気流粉砕機で製粉した米粉を用い、乾燥の有無と加水量の違いがグルテンフリー米粉パンの製パン性に与える影響を検討した。
【方法】製パン試験では以下の加水条件を設定した:乾燥米粉200gに対し水180gを加えた(条件①)、未乾燥米粉に①と同等の生地中水分含量となるよう加水した(条件②)、①と同等の見かけ粘度となるよう加水した(条件③)。また、米粉に対して電子顕微鏡と吸水試験を実施した。さらに、各生地に対してB型粘度計による見かけの測定および動的粘弾性測定を行い、焼成パンについては比容積、テクスチャー、断面構造を評価した。
【結果】乾燥米粉を用いた条件①と比較して、未乾燥米粉を用いた条件②では、比容積および硬さが有意に低下(p < 0.05)し、製パン性が低下した。一方、条件③では、これらの指標において条件①との差は認められず、見かけの粘度を調整することで製パン性の改善が認められた。電子顕微鏡観察では、未乾燥米粉と乾燥米粉デンプン粒子の形態に違いが見られ、それに伴い吸水速度にも差が生じた。さらに、生地の動的粘弾性挙動において、条件③、条件①、条件②の順に粘弾性が増加した。以上の結果から、生地の粘度を適切に調整することで、未乾燥米粉を用いた場合でも乾燥米粉と同等の製パン性が得られることが示された。