【目的】卵液は加熱によりゲル化し、希釈率を調整することで茶碗蒸しや玉子豆腐といった口当たりが異なる料理となる。市販食用塩は、製法やミネラル含有量に違いがあるが、それらが希釈卵液ゲルの調理特性に与える影響については十分に検討されていない。そこで本研究では、希釈率が異なる卵液に各種市販食用塩を添加し、加熱調理後のゲルに及ぼす影響を検討した。
【方法】鶏卵は小売店(東京都千代田区)で購入し、採卵4日後を試料とした。卵黄と卵白はそれぞれ裏ごしし、重量比1:2で混合して全卵液とした。市販食用塩は4種類用いた。希釈卵液ゲルに対して0~1.1%(w/w)の範囲で濃度を調整し、卵液と塩溶液の混合比は、茶碗蒸し型は1:2、玉子豆腐型は1:1(いずれも重量比)とした。85℃で20分間蒸し加熱後、一晩冷蔵保存して測定試料に用いた。茶碗蒸し型はひずみ率、離水率、分離水の濁度を測定し、玉子豆腐型は色調(L*a*b*)および破断強度を測定した。
【結果】茶碗蒸し型では市販食用塩の種類や濃度に関わらず、塩添加により無添加よりもひずみ率が有意に低下し、保形性が向上した。一般に塩添加は希釈卵液ゲルの離水率を低下させる効果があるが、本結果では離水率を上昇させる種類もあった。一方で、塩添加には分離水の濁度を低下させる効果があった。玉子豆腐型では塩添加によりL*値(明度)は上昇し、a*値・b*値(色味)は減少傾向を示した。特にa*値・b*値の変化は種類によって異なった。破断特性は主成分分析の結果、種類と濃度およびゲルの特徴によって識別可能な分布が示された。以上より、市販食用塩の種類と濃度は、希釈卵液ゲルの物性・外観に影響を及ぼすことが示された。