図書館学会年報
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論文
米国の公共図書館の貸出業務における専門的職務と非専門的職務の分離
─1920年代から1950年代までを中心に─
大庭 一郎
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1996 年 42 巻 4 号 p. 199-215

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抄録

 筆者は,先の論文(大庭,1994)で,米国の公共図書館における専門的職務と非専門的職務の分離の基礎が,1920年代から1950年代にかけて確率されたことを明らかにした。本稿の目的は,同じ時期の米国の公共同書館の貸出業務を対象として,専門的職務と非専門的職務の分離の発展過程を解明することである。そのため,貸出業務の職務分離に関する32件の文献を収集し,貸出業務に関する様々な変化を分析した。
 研究の結果,以下のことが明らかになった。
1) 1939年のアメリカ図書館協会の職階制では,専門職も,貸出業務の経験をある程度積むまでは,貸出業務における非専門的職務を正規の仕事として担当した。
2) 貸出業務における専門的職務と非専門的職務の分離の過程で,(1)貸出方式の改善と(2)貸出デスクの改善が行われた。
3) 1930年代以降,専門職の監督の下で,非専門職も徐々に貸出業務を担当するようになった。
4) 1950年代には,貸出業務の職務分離は,大規開な公共図書館では実現されたが,小規模な公共同書館では職員及び予算が少ないため困難であった。そのため,小規模な公共図書館では,専門的職務と非専門的職務の両方を担当する準専門職が配置されていた。

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© 1996 日本図書館情報学会
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