2020 年 7 巻 p. 32-46
産業のデジタル化の原動力となっている「デジタル・プラットフォーム(DPF)を介して財と情報を交換するビジネス」を分析するためには,DPF上での「データ集積と流通」及び「協調的ネットワーク」に着目することが必要であることを明らかにした。その上で,産業構造の変化にともなう最近の立法政策や研究動向を鳥瞰するとともに,「Society5.0の時代における法とアーキテクチャのリ・デザイン」として提言されたガバナンスモデルの意義と問題点を検討した。 以上の考察から,Society5.0の法と政策を検討するためには,ヒトゲノム計画に伴って登場したELSI(Ethical, Legal and Social Issues)研究の視点を参考にする必要があることを指摘し,DPFビジネス,その発展型であるスマートビジネスのコンポーネントを設計する際にも,新しい技術に対する社会の期待,ニーズ, 懸念等をあらかじめ可視化し,ELSI 的な問題を総合的に検討する仕組みを埋め込んでおくこと,社会が共有すべき価値を実現するためのルールとして,財・契約・責任・人に関するルールと,AIなどデジタル社会の基幹技術に関する倫理基準を予め定めてしておくことが重要であることを提言した。