2019 年 28 巻 1 号 p. 1-12
不純物の混濁等による有機生産香辛料の汚染が問題になり、その生産過程の信頼性に疑問が投げかけられている。スリランカでは香辛料はマイナー作物に位置づけられるが、有機生産された香辛料の輸出量は増加傾向にあり、農家の収益向上にとって無視できないものになっている。しかし、その生産過程に関して検討した先行研究は見当たらない。そこで、本論文の目的は、スリランカの有機香辛料生産の実態に関して、生産農家の置かれた社会経済的背景、生産技術、及び有機栽培基準遵守の状況を明らかにすることである。
調査は、香辛料の主要な生産地帯である中央省の有機香辛料生産農家69戸を対象に、調査票を用いた質問と参与観察によって行った。また、収集したデータを記述統計により分析した。分析の結果、特に生産農家の有機栽培基準遵守の状況については、必ずしも全ての生産農家が基準を完全に遵守しているわけでなく、とりわけ収穫後の農産物の取扱いに課題のあることが明らかになった。このことから、生産農家に対する監視、汚染物質や食品の品質基準に関する教育の強化など、基準遵守を促進させる支援サービスの必要性が示唆された。