2019 年 28 巻 1 号 p. 13-22
本稿では、ベトナムメコンデルタ地帯における唐辛子農家のマーケティングチャネルの決定に作用する要因とその決定の農家所得への影響を分析している。本研究では、ドンタップ省とチャービン省の300戸の唐辛子農家への調査からのクロスセクションデータが使用され、観察できない要因によるセレクションバイアスに対処するために内生的スイッチング回帰が適用された。分析結果は、農協に販売している農家は、もし、そうしなければもっと少ない所得となっていたであろうこと、農協に販売していない農家は、農協に販売していたならば、より多くの所得を稼げたであろうことを示している。また、唐辛子生産に従事した年数、接する買い手の数、家財の大小、共通目標を有する団体への参加や農協への供給者である知人を有することによる社会的なネットワークの強弱が農家のマーケティングチャネルの選択に作用していること、農協に販売した場合とそれ以外に販売した場合の農家所得への影響要因とその作用は異なることを明らかにしている。これらの結果から農家と農協の間での売買を推進することの重要性が指摘できる。