抄録
ADEOS/NSCATで観測された海上風ベクトルの精度評価を目的として,初期データの全球海洋における
風速・風向の統計分布を調べ,ヨーロッパ中期気象予報センター(ECMWF)の客観解析データとの比較を
行った。その結果,風速については,低風速域でNSCATのデータはECMWFに比べて風速を過小評価す
る傾向が明らかになった。風速のヒストグラムを見ると,低風速域のデータが極端に多く,風速分布のピー
クの低風速側に膨らみのある形を持つことが示された。この風速分布の歪みは,入射角によって系統的に
菰を変える性質を持つことから,現在NSCATの風速ベクトルの算出に暫定的に用いられているモデル関数
SASS-2の低風速域における誤差によるものと考えられる。風向については,衛星の軌道に相対的な風向方
位角に対する頻度分布を求めたところ,アンテナビームの方向と相対的に,鋭いスパイクやギャップなど
の系統的な偏りを持つことが明らかになった。全球海洋上の風速場が衛星軌道やアンテナの方向と相対的
に分布を持つことは考えられないので,このような風速場の指向性もモデル関数の風向特性の誤差による
ものと考えられる。