恐怖などの環境ストレスに対処するためには,交感神経系の活動上昇が必須である.多くの恐怖は先天的かつ種特異的であり,恐怖刺激の情報は,扁桃体から直接視床下部や脳幹の自律神経中枢へ送られて交感神経反応をきたす.一方で恐怖は学習可能でもあり,そのような恐怖に対する反応を解析することによって,交感神経系の上位階層構造を調べられる.最近のヒト脳機能研究により,前帯状皮質や前部島皮質の脳活動が交感神経活動と関連していること,特に前者は情動の認知的生成と制御にも関係することが報告され,恐怖と自律神経系とのつながりにおいて扁桃体と前帯状回の機能的な結びつきが重要な役割を果たしていることが明らかになりつつある.