2019 年 56 巻 3 号 p. 119-122
筋や筋膜の疼痛メカニズムを明らかにするため,筋・筋膜性疼痛症候群のモデルとして使われる遅発性筋痛(DOMS)を解析した.DOMSには従来考えられてきた筋損傷・炎症メカニズムは必須ではなかった.筋機械痛覚過敏を引き起こす経路には,運動中に産生されるブラジキニン様物質-B2ブラジキニン受容体-神経成長因子の経路と,COX-2-プロスタグランジン-グリア細胞由来神経栄養因子の経路の2つがある.両因子は筋細胞・筋衛星細胞によって産生され,筋細径線維受容器の機械感受性を高める.日常的に筋が行っている仕事の中に筋自身に神経栄養因子を産生させる要素があり,筋機械痛覚過敏を引き起こすことが示された.