老視は,加齢に伴う構造的,機能的な老化過程の一部としての調節力の減衰である.調節機能の理論を見直したところ,いずれの理論が正しいのか未だ結論は出ていないが,Helmholtz理論は最も広く受け入れられている理論であった.一方,老視の機序として最も重要な因子であるのは,水晶体嚢の硬化により調節作用が消失することである.近見反応の輻湊-調節間にはクロスリンクがあるため,加齢に伴って近見外斜位が増加するが,融像性輻湊は逆に強化していると考えられている.また近見縮瞳は,調節力の減衰を補うように更に縮瞳を強めて焦点深度を大きくすることでボケを補償している.老視の機序とこれに伴う近見反応の変化について考察した.