2019 年 56 巻 4 号 p. 257-263
飢餓状態になるとエネルギー供給が極めて限られるため,ヒトを含めた哺乳類は代謝などのエネルギー消費を抑え,生き延びようとする.この時,脳内では神経ペプチドneuropeptide Y(NPY)が分泌され,代謝抑制などの作用に関わると考えられる.NPYが視床下部に作用すると,代謝が抑制されるとともに摂食が促進されるため,効率よく飢餓状態を生き延びることができる.しかし,その中枢神経メカニズムは不明であった.著者らは,視床下部におけるNPYの作用が延髄網様体のGABA作動性ニューロン群の活性化を通じて,代謝抑制と摂食促進を同時に起こすことを発見し,NPYによる飢餓反応の神経路メカニズムを明らかにした.