グレリン-神経ペプチドY(NPY)空腹系は,個体や種族維持の根幹を担ってきた食欲・体重調節系であり,進化の長い歴史の中にあっては,飢えに応答する役割を有してきたと考えられる.グレリン-NPY空腹系はまた,健康長寿をもたらすカロリー制限の効果を介在するシステムでもある.近年,高齢化の進む我が国において,サルコペニア(骨格筋萎縮)を基礎としたフレイル(frailty)が注目されている.このフレイルの引き金になるのは食欲不振であり,グレリン-NPY空腹系の加齢によるシグナリングの低下が,その要因であると考えられる.漢方薬,とりわけ人参養栄湯は,グレリン-NPY空腹系を活性化し,フレイル病態への有用性が期待される.