咀嚼には摂食・消化の補助だけでなく,覚醒や注意力向上など脳への作用もある.咀嚼中に大脳皮質局所血流(rCBF)は増加するが,その仕組みは不明だった.我々は最近,麻酔ラットの皮質咀嚼野の電気刺激により血圧変化に依存しない顕著なrCBF増加と,それに先行する前脳基底部マイネルト核(NBM)のニューロン活動増加が誘発され,そのrCBFの増加はNBM活動を抑制すると減弱することから,咀嚼中のrCBF増加にNBM活性化が関与することを示唆した.咀嚼野刺激によるrCBF増加は筋活動の抑制に影響されないことから,咀嚼をイメージすることで,実際の咀嚼運動と同様,NBM活性化とrCBF増加がおこる可能性が考えられる.