Virtual reality(VR)技術を用いて悪心の誘発を行い,その際の自律機能の生理的変化を胃電図および心拍変動(heart rate variability: HRV)解析を用いて評価した.解析対象は,成人男性16名とした.VR動画は,円筒形の内部に白黒のストライプが配置された動画を製作し,15分間回転させた.実験はVR動画負荷の前後15分間を含む計45分間とし,対照群は静止画のみを見せた.悪心の評価を行い,さらに胃電図記録およびHRV解析を行った.VR負荷群では,90%の確率で悪心が出現し,胃電図は正常波成分の減少および異常波成分の増加が示された(p<0.05).しかし,心拍数,HFおよびLF/HFにおいては有意差がみられなかった.以上より,VRシステムを用いることで,従来より簡易に視覚性動揺病による悪心と胃電図の異常波成分の増大を得た.