Fisher症候群の回復過程において瞳孔対光反射と近見縮瞳,屈折値と眼圧の経過を追った.症例は61歳女性.上気道炎2日後から複視を自覚し両眼瞳孔散大と外斜視にて近医から紹介された.矯正視力は右眼1.2と左眼0.9,眼圧は右眼22.2 mmHgと左眼23.7 mmHgで高眼圧だった.眼球運動は両眼とも全方向不動,眼瞼下垂,輻湊麻痺がみられた.瞳孔径は明室で両眼6.5 mmと散大し,対光反射と近見縮瞳は消失していた.ふらつきと膝蓋腱反射消失,抗GQ1b抗体陽性からFisher症候群と診断された.重度の眼球運動障害のため免疫グロブリン療法を行った.第11病日に対光反射は改善し始めたが近見縮瞳は消失したままだった.眼球運動は2回目の免疫グロブリン療法で内転は改善し始めたが輻湊麻痺は続いた.さらに屈折値の遠視化と眼圧が変動した.対光反射と近見縮瞳の乖離,内転障害と輻湊麻痺の乖離から本症例は末梢性だけでなく中枢性神経障害も生じたと考えられた.