消化管内腔を通過する食物の情報は,自律神経によって中枢神経系へ伝達されている.求心性迷走神経はその伝達に重要な役割を演じている.消化管内腔の栄養素とその他の分子は上皮細胞のセンサーに受容される.その結果,一部の上皮細胞より食関連ホルモンと呼ばれるペプチドが放出され,これらは求心性迷走神経を刺激あるいは抑制している.近年,食関連ホルモンと求心性迷走神経により伝達された栄養情報は,視床下部での自律神経機能を調節する重要な因子と考えられている.この項では,臨床医の視点から消化管栄養知覚と求心性迷走神経機能についての知識をまとめ,パーキンソン病を含めた自律神経疾患との関連を考察したい.