自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
最新号
選択された号の論文の25件中1~25を表示しています
大会長企画
  • 黒岩 義之, 平井 利明, 横田 俊平, 藤野 公裕, 山﨑 敏正
    2021 年 58 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    自律神経科学はストレス反応の科学と言って過言でない.ストレスには外部環境ストレスと内部環境ストレスがある.生体の細胞膜には環境ストレスを感知するバイオ・センサーがある.ストレス中枢のセキュリテイ・ゲート(脳の窓)は視床下部と脳室周囲器官である.ストレス・シグナルの伝達経路には神経制御系,液性制御系,細胞シグナル伝達系がある.ストレスから生体を守る視床下部・辺縁系の攪乱によって不眠,内臓症状,慢性疲労,記憶学習障害,筋痛,感覚過敏など多彩な症状が起こる(視床下部症候群,脳室周囲器官制御破綻症候群).ストレス反応の制御はテロメア損傷,老化,発癌,フレイルの予防につながる.一方,慢性腎臓病などの内部環境ストレスはテロメアを攻撃して,寿命短縮や発癌を誘発する.ストレスに関して基礎と臨床の両面から総合的にアプローチできるのが自律神経科学である.自律神経科学元年の幕開けとルネッサンスの到来を期待する.

特別講演
  • 安東 由喜雄, 増田 曜章, 松下 博昭, 大林 光念, 植田 光晴
    2021 年 58 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    トランスサイレチン型家族性アミロイドポリニューロパチー(ATTR-FAP)は,TTRの遺伝子変異が原因となり,アミロイド線維が末梢神経や自律神経系に沈着し機能障害を起こす遺伝性全身性アミロイドーシスである.本症の多くの症例で,小径線維ニューロパチーを起こすとともに,早期から起立性低血圧,発汗障害,消化管運動異常,勃起不全などの多彩な自律神経障害を認め,患者の生命予後やQOLに影響を及ぼす.近年,末梢の自律神経障害の非侵襲的な検査としては皮膚生検と共に,非侵襲的なSudoscanが有用である.疾患修飾薬としてTTR四量体安定化剤が認可され,遺伝子サイレンシングの臨床治験も進行中である.これらの新規治療薬は,いずれも発症早期からの治療介入が最も進行抑制効果を示すことから,自律神経障害の早期診断がますます重要となっている.

  • 砂川 賢二
    2021 年 58 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    近年の技術革新と神経科学の進歩により,従前の治療のみでは克服が困難であった疾患,特に循環器疾患において,循環調節神経系に電子的に介入することで治療が出来る可能性がみえてきた.薬物治療はその動態から薬効の出現から消退までの時間分解能に自ずと限界がある.一方,神経系は作用の時間分解能が高いことが最大の特徴であり,薬物治療を補完する可能性がある.本稿では主として我々が研究開発してきた電子的な神経修飾治療について,その可能性を纏めてみたい.

  • 東 敏昭
    2021 年 58 巻 1 号 p. 23-24
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    Recent researches support the longer and adequate working lives contribute the health of aged workers amid policy concerns about the costs of social welfare. Some comprehensive researches showed activity theory that older adults who quit from full-time jobs deteriorated both mental health. In the field of occupational health, proper placement, keep the work ability and employability considering the individual neurophysical status, along with preventive action for workers in workplace. In many cases, working is an effective way of social participation for older people and keep the health status better over in Japan. Neurovegetative researches with a viewpoint of labour science and occupational health can find out the evidence which contribute the good practice for happiness and health of aged workers especially using data science methods.

教育講演
  • 仙波 恵美子, 上 勝也
    2021 年 58 巻 1 号 p. 25-31
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    情動を,行動や自律神経反応に転換する脳メカニズムとして辺縁系が重要な働きを担っているが,慢性痛や慢性ストレスの状態ではこのシステムが機能不全に陥り,様々な精神身体症状を引き起こす.運動によりこれらの症状は改善するが,我々は,そのメカニズムとして脳報酬系が活性化されるとともに,扁桃体基底核内側部の側坐核に投射するglutamateニューロンが活性化されること,扁桃体中心核のGABAニューロンの活性化が抑制されることを動物実験で示した.痛みやストレスに伴う陰性情動により,辺縁系が機能不全に陥るが,生活習慣を変え日常生活での活動性を高めることでその機能は正常化され,痛みや自律神経症状は改善しQOLも高まると思われる.

トピックス
  • ―神経活動記録の有用性―
    新藤 和雅
    2021 年 58 巻 1 号 p. 32-37
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    これまでに,マイクロニューログラフィーを用いて,様々な神経活動の記録が報告されてきた.末梢神経障害では,感覚神経の神経幹内記録により加算の必要がない高い振幅の神経活動電位が記録できることから,詳細な波形の分析が可能であり,糖尿性や脱髄性ニューロパチーなどに臨床応用されてきた.また,自律神経疾患では多汗症や無汗症の病態分析や純粋自律神経不全症における特異な交感神経活動記録などが報告されてきた.著者らは,神経変性疾患の代表である筋萎縮性側索硬化症患者では,効果器の反応性に差が無くても,安静時の筋交感神経活動が健常者と比べて増加している特異的な自律神経異常があることを明らかにしてきた.

  • 平井 利明
    2021 年 58 巻 1 号 p. 38-48
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    皮膚生検によって得られた組織に対して,PGP9.5抗体による免疫組織化学を共焦点レーザー顕微鏡下で行うと,表皮内神経は表皮細胞間を走行するように描出された.透過型電子顕微鏡を用いて,我々の固定条件であるリン酸緩衝液の濃度を0.08 Mに設定し表皮細胞間の超微形態を観察すると,ケラチノサイトの収縮は少なく,微絨毛のかみ合い構造がみられ,ケラチノサイト,軸索,メラニン細胞,ランゲルハンス細胞の4種の突起構造をケラチノサイトの細胞間腔に認めた.軸索は電子密度が低く,シュワン細胞の基底膜を持たず細胞内小器官に乏しく,ケラチノサイトの形質膜に直接に接していた.他の突起構造と異なり,軸索は細胞間隙と定義した大きな細胞間腔を認めず,突起の形状は円または楕円形であった.近年ではPGP9.5抗体を用いた皮膚生検は小径線維ニューロパチーの診断に欠かせない検査法となり,自験例を踏まえてその重要性について考察する.

シンポジウム
  • 鈴木 一博
    2021 年 58 巻 1 号 p. 50-54
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    神経系が免疫系を調節していることは古くから指摘されてきたが,神経系からの入力がどのようにして免疫系に影響を及ぼすのか,そのメカニズムは長らく不明であった.しかし近年,自律神経系と免疫系の相互作用のメカニズムが急速に明らかになりつつある.とりわけ交感神経が多様な分子機構を介して免疫応答を制御していることが明らかになった.ここでは,交感神経によるリンパ球の循環制御に焦点を当て,その分子機構について解説するとともに,その生理的意義を免疫応答の日内変動の観点から考察する.

  • 海田 賢一
    2021 年 58 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    ギラン・バレー症候群(GBS)は代表的な急性免疫性ニューロパチーであり,糖脂質抗体による補体介在性神経障害が主病態である.自律神経障害はGBSの重症例で頻度が高く,死因として重要である.糖脂質抗体陽性例の多くで抗原の局在が神経障害の分布を規定するが,自律神経における標的抗原は未同定である.GBSの自律神経病理では炎症細胞浸潤を伴う脱髄が迷走神経に優位であり,ミエリン蛋白を感作した実験的ニューロパチーモデルの一部でも確認されるが,抗糖脂質抗体陽性家兎GBSモデルでは確認されていない.自律神経障害を呈するGBSの管理においてposterior reversible encephalopathy syndrome,たこつぼ心筋症等の末梢神経系外合併症にも注意する必要がある.

  • 川田 徹, 杉町 勝
    2021 年 58 巻 1 号 p. 61-70
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    心臓は交感神経と迷走神経による二重支配を受けている.交感神経は心拍数を上昇させ,迷走神経は心拍数を低下させるが,両者の違いはそれだけではない.交感神経に比べて迷走神経による心拍数調節は速い.私たちはこのような動特性の違いを定量化するために,麻酔下のウサギを用いて心臓交感神経および迷走神経を白色雑音という特殊な信号系列で電気刺激し,心拍数応答を調べた.その結果,交感神経と迷走神経は互いに他の動特性を増強することが判明した.このような相互作用は,心拍数応答に動作点依存的なシグモイド曲線状の非線形性を仮定するとうまく説明できる.単純なニューラルネットワークを利用して,心拍数調節の動特性と非線形特性の同時推定が可能であった.今後,さらに複雑なニューラルネットワークを使うことで,自律神経活動に対する心拍数応答の推定精度を高めることや,心拍数の変化を元に自律神経活動を逆推定するような研究が期待される.

  • 宮本 智之, 沼畑 恭子, 赤岩 靖久, 宮本 雅之
    2021 年 58 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    多系統萎縮症(MSA)は,自律神経障害,パーキンソン症候群,小脳性運動失調などの様々な組み合わせの神経症候を有する,多くは孤発性の成人発症,進行性の神経変性疾患である.睡眠断片化を伴う不眠,睡眠関連呼吸障害,レム睡眠行動異常症,周期性四肢運動などの睡眠関連疾患を合併する.特に,喉頭喘鳴は喉頭レベルで上気道閉塞を反映し,睡眠中の突然死の危険について臨床医に警告する.喉頭喘鳴が睡眠中にのみ発生する場合,CPAP療法が適応となる場合があるが,忍容できないまたは覚醒時に喉頭喘鳴も現れる場合は気管切開を検討する必要がある.正確な診断あるいは治療計画は患者とその介護者への医療の質の向上に貢献できる.

  • 出口 一志
    2021 年 58 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    多系統萎縮症(multiple system atrophy: MSA)の自律神経障害は,主に中枢神経系,一部は交感神経節後線維におけるα-シヌクレインの蓄積によって引き起こされる. 代表的な自律神経障害は,排尿障害,起立時の血圧調節障害および睡眠関連の呼吸障害であり,これらは生命予後にも影響している.尿失禁と起立性低血圧がprobable MSAの診断基準に含まれるが,残尿量の評価,能動的起立,起立時間の延長が診断の感度と特異度を改善する可能性がある.睡眠中のMSAの突然死を予測することは難しいため,自然睡眠および薬物誘発睡眠による呼吸機能の定期的な評価が必要である.

  • 篠原 啓介
    2021 年 58 巻 1 号 p. 86-90
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    レニン・アンジオテンシン系(RAS)は脳内にも存在し,脳内RASの亢進は交感神経活性化を来す.RASの律速酵素レニンには,分泌型レニンと細胞内レニン(細胞外に分泌されず細胞内に留まる)のアイソフォームがあり,脳内では細胞内レニンが優位に発現する.興味深いことに,細胞内レニンノックアウトにより,交感神経活性化を伴って血圧は上昇し,高脂肪食誘発性体重増加は抑制された.さらには脳内の分泌型レニンの増加を介した脳内RAS亢進がみられた.これらより,細胞内レニンは脳内において分泌型レニン発現に対して抑制的に働き,下流のアンジオテンシン産生を抑制することで,脳内RASという中枢性循環・代謝調節機構を制御している可能性が示唆された.

  • 安部 力, 森田 啓之
    2021 年 58 巻 1 号 p. 95-100
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    内耳(骨迷路)にある前庭系の末梢器官は耳石器と半規管で構成されている.耳石器(球形嚢と卵形嚢)は重力や頭位を,また半規管は回転加速度を認知する.これらの末梢器官は眼球運動(前庭動眼反射)や姿勢(前庭脊髄反射)を制御している.興味深いことに,末梢前庭器への刺激は交感神経を介した動脈血圧応答を引き起こすことも明らかになってきた(前庭動脈血圧反射).さらに,この応答性は重力環境変化による前庭系の可塑により低下することがわかってきた.本稿では,起立耐性に対する前庭動脈血圧反射の役割について説明する.また,高齢者や宇宙飛行士の前庭機能低下に対する末梢前庭器電気刺激法の可能性についても述べる.

  • 木場 智史, 奈良井 絵美
    2021 年 58 巻 1 号 p. 101-104
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    運動時に見られる急性の自律性生体反応(頻脈・昇圧など)は恒常性維持に必須の生体適応である.運動時の循環調節における中枢の重要性は19世紀末には指摘されていたにも関わらず,そのメカニズムの解明研究は現在でも進んでいない.本稿では「運動時の中枢性循環調節メカニズムの解明」を念頭に,セントラルコマンド(運動を発現するために脳で生じる,骨格筋収縮と自律神経系の変化とをパラレルに引き起こすシグナル)の機能生成を担う脳内回路を解析する意義とそれにまつわる知見,そして今後の課題について論じる.

  • 岩﨑 有作, 矢田 俊彦
    2021 年 58 巻 1 号 p. 105-114
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    食後に分泌促進される膵ホルモンのインスリンと腸ホルモンのGLP-1(glucagon-like peptide-1)は,食後高血糖の改善や満腹感の創出など食後生理作用を作り出す重要な内分泌ホルモンである.これらホルモンは,血行を介した「液性経路」で様々な臓器に作用することは自明である.筆者らは,これらホルモンが分泌される臓器周辺において,局所ホルモンとして近傍を支配する求心性迷走神経に作用し,「神経経路」にて中枢神経系に影響を与え,中枢・全身機能を制御することを見出した.本稿では,インスリンとGLP-1の求心性迷走神経への協働作用と,希少糖アルロースの内因性GLP-1分泌促進作用による求心性迷走神経を介した摂食・糖代謝調節を解説する.

  • 山下 哲
    2021 年 58 巻 1 号 p. 116-120
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    一般に,動物が急激なストレスに晒されると,心拍・呼吸・血圧の上昇,鎮痛作用などが引き起こされるが,これはストレス防衛反応と呼ばれている.交感神経系の賦活化により引き起こされるこれらの反応は,例えば天敵に遭遇した場合などに動物個体の生存確率を上げるために必要不可欠な反応である.以前の研究で,オレキシン欠損マウスにおいて,ストレスによる心拍・血圧上昇が減弱することが知られていることから,視床下部オレキシン神経は,このストレス防衛反応に深く関わっていることが推察される.しかし,このような働きをもつオレキシン神経が,ストレスが負荷された瞬間およびその前後においてどのようなタイムコースで活動しているのか,その詳細は明らかとなっていない.ストレス誘発自律応答に関わる脳内回路を同定するためには,無麻酔・非拘束状態のマウスを用いて実験を行う必要がある.また,視床下部には多くの異なる種類のペプチドニューロンが混在しており,これらの中からオレキシン神経細胞のみの活動を抽出する必要がある.細胞外記録などの従来の電気生理学的方法を使用して,覚醒ラットのオレキシンニューロンの活動を記録し,その後,免疫組織化学手法により記録されたニューロンを特定する方法や,記録電極を細胞にパッチする単一細胞記録技術によっても記録できるが,マウスの脳には約2,000〜3,000個のオレキシンニューロンがあるので,一度に1つまたは2つの神経活動しか記録できないこれらの手法では,サンプリングバイアスを考慮する必要がでてくる.これらのことをふまえると,本実験には,ファイバーフォトメトリー(FP)法が最適であると判断した.

  • 菅野 康太
    2021 年 58 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    実験動物であるマウスやラットでは,超音波の発声(ultrasonic vocalizations, USVs)が用いられており,特に母子間や雌雄間の文脈で顕著に観察される.2005年,マウス求愛発声に鳥類と類似した歌様構造があることが報告されて以来,マウス求愛発声はコミュニケーションの指標として,自閉症関連遺伝子改変マウスなどの様々なモデルで社会性や親和性,言語機能の研究に用いられるようになっている.本稿では,それら齧歯類USVsについて概説し,自律神経系との関連についても考察する.

  • 佐々木 拓哉
    2021 年 58 巻 1 号 p. 125-132
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    実験動物を用いた迷走神経活動の計測や操作により,その生理学的特性が多数明らかになってきた.近年では,中枢神経系の研究分野で汎用されている光遺伝学的手法が,迷走神経にも適用され始めている.従来は,実験動物において迷走神経を活性化する手法として電気刺激が主流であったが,この方法では求心性や遠心性の方向選択的刺激,あるいは各臓器と連絡する多様な迷走神経を完全に区別して刺激することが難しかった.光遺伝学的手法では,特定の迷走線維種のみに光感受性分子を発現させることで,その線維を選択的に光刺激により活性化させることができるため,より高い精度をもって,多様な迷走神経の活動を操作できる.本稿では,光遺伝学的手法を迷走神経に適用し,生理学的特性を調べるため最近の研究について概説する.一つ一つの知見は未だ散発的ではあるが,同様の知見の蓄積により,より体系だった迷走神経生理の理解に繋がると期待される.

  • 片岡 直也, 中村 和弘
    2021 年 58 巻 1 号 p. 133-138
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    心理ストレスは様々な交感神経反応を惹起し,ストレサーに対して身体が迅速に対処するのを助ける.心理ストレスや情動は皮質辺縁系で処理され,一方,生体恒常性の維持は視床下部や脳幹が担う.しかし,皮質辺縁系と視床下部を繋ぐ心身相関の神経路は不明であった.我々は,心理ストレスが視床下部背内側部(DMH)から延髄縫線核への神経伝達を通じて交感神経出力を亢進させ,体温上昇や脈拍・血圧の上昇といったストレス反応を惹起することを見出した.さらに最近では,内側前頭前野の一部からDMHへ心理ストレス信号が伝達され,交感神経反応だけでなくストレス行動も駆動することを明らかにし,心身相関の鍵となる神経路を解明した.

  • 小澤 鉄太郎
    2021 年 58 巻 1 号 p. 140-143
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    消化管内腔を通過する食物の情報は,自律神経によって中枢神経系へ伝達されている.求心性迷走神経はその伝達に重要な役割を演じている.消化管内腔の栄養素とその他の分子は上皮細胞のセンサーに受容される.その結果,一部の上皮細胞より食関連ホルモンと呼ばれるペプチドが放出され,これらは求心性迷走神経を刺激あるいは抑制している.近年,食関連ホルモンと求心性迷走神経により伝達された栄養情報は,視床下部での自律神経機能を調節する重要な因子と考えられている.この項では,臨床医の視点から消化管栄養知覚と求心性迷走神経機能についての知識をまとめ,パーキンソン病を含めた自律神経疾患との関連を考察したい.

  • 上園 保仁, 須藤 結香
    2021 年 58 巻 1 号 p. 147-151
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    GABAB受容体はGABAB1とGABAB2サブユニットで構成される二量体化受容体である.この受容体に結合する機能的蛋白は数多くあり,それらは創薬開発ターゲットのひとつとなっている.中枢性筋弛緩薬バクロフェンは脊髄のGABAB受容体に働き,痙縮症状等を軽減する.しかし脳血液関門を通りにくいため,脊髄内のみでバクロフェン濃度を上げるバクロフェン髄腔内注入療法が開発された.髄腔内バクロフェン療法中に「バクロフェン耐性」を形成することがあり,GABAB受容体の脱感作がその原因と考えられている.バクロフェン耐性を起こす患者への対応は重要であり,耐性予防,改善策の研究は重要な課題である.

  • 村上 雅二, 後藤 真一, 國徳 尚子, 平田 好文
    2021 年 58 巻 1 号 p. 152-159
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    脳卒中,脳性麻痺,重症頭部外傷などによる亜急性期あるいは慢性期の重症痙性麻痺に対するバクロフェン持続髄注(ITB)療法は確立した治療法である.バクロフェンは,脊髄後角に多く分布するGABAニューロンのGABAB受容体に結合し抗痙縮効果を示す.GABAB受容体はGタンパク質共役型受容体の一つで,薬剤耐性が出現することがある.主な機序として,Gタンパク質共役型受容体キナーゼサブタイプ4および5によるGABAB受容体の脱感作や,長期的なバクロフェン投与によるGABAB受容体の細胞内(ライソゾーム)での分解などとされる.対策として,高用量の長期投与を避け,痙縮増悪なければ可能な限りの減量が肝要と考える.また最近,ITB療法は抗痙縮効果に加え,特に重症頭部外傷時の発作性交感神経過活動(高熱など)にも有効とされる.我々の施設の57症例(59植込み)を振り返りITB療法の効果と問題点につきレビューする.

ミニレヴュー
  • 藤井 敬之, 山﨑 亮, 宮地 佑希野, 飯沼 今日子, 吉良 潤一
    2021 年 58 巻 1 号 p. 163-168
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    神経障害性疼痛は,様々な病態を含む難治性疼痛のひとつである.近年,自己抗体が体性感覚神経系の抗原に直接結合し,疼痛を誘導する「自己抗体介在性神経障害性疼痛」といった疾患概念が提唱されるようになった.私たちは,神経障害性疼痛患者の一部において,後根神経節と三叉神経節の小型ニューロンに特異的に結合する自己抗体である抗Plexin D1抗体が存在することを世界に先駆けて発見した.抗Plexin D1抗体陽性患者では,灼熱痛や腫脹・発赤といった症状がみられるが,免疫治療により疼痛の緩和が得られており,抗Plexin D1抗体は自己抗体介在性神経障害性疼痛の新規原因抗体のひとつと考えられた.

原 著
  • 有本 邦洋, 下重 里江, 鎌田 泰彰, 原 直人, 黒澤 美枝子
    2021 年 58 巻 1 号 p. 169-174
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/04/15
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,寒冷昇圧試験(CPT)時の昇圧度の差で対象者を群分けした場合に心拍変動と瞳孔の反応に差がみられるかを明らかにすることである.正常血圧男性16例(22 ± 1歳)にCPTを行い,拡張期血圧の上昇が10 mmHg以上を反応群,未満を低反応群とした.統計には二元配置分散分析を用いた.低反応群に比べて反応群では安静時のLF/HF,LFnu,CVR-Rが高値,HFnuは低値であった.また反応群では,CPT時にLF/HFとLFnuは有意に減少し,HFnuは有意に増加した.瞳孔はCPT時に全例では有意な散大を示したが,2群間での反応差はみられなかった.以上の結果より,正常血圧者における寒冷昇圧の大小の差は,安静時とCPT時における心臓自律神経活動の差として認められることが明らかとなった.

feedback
Top