2021 年 58 巻 4 号 p. 247-259
情報通信技術や機器の進歩により高精細度の映像を広く伝播することや仮想空間で作業することが可能となり,生活の利便性が増加した.これらの技術はゲームなどエンターテインメントをはじめ産業,医療,教育等広い分野で使われ,人間の持つ可能性が増大した.一方,映像視聴に伴う「望ましくない生体影響」も出現したが,これらは自律神経機能と深い関係を持つ.映像環境を有効に活用するには生体影響について知り,これを適切に制御する必要がある.本総説では映像視聴に伴う生体影響の歴史,映像酔い/VR酔いの症状,研究の状況,メカニズム,防止のための方策等について述べる.可塑性の高い発育期にある未成年者の映像視聴に伴う健康被害に注目した.映像の生体影響分野の研究論文や総説は数多いが紙数が限られているので,一部のみを紹介する.