画像技術の進歩により脳脊髄液循環動態に関する新たな事実が判明し,それに伴い特発性正常圧水頭症(iNPH)の病態も盛んに研究されているが未だ不明な点が多い.著者らの施設にてシャント手術を要した続発性正常圧水頭症(sNPH)には,画像上iNPHに特徴的とされるSylvius裂の開大やDESHを認めた症例はない.術後,sNPHは全例で画像所見の改善と臨床症状の回復を認めたのに対し,iNPHでは画像所見の明らかな改善を認めないにも関わらず臨床症状の回復を認めた症例を少なからず認めた.この結果から,髄液の吸収障害で生じるiNPHとsNPHの病態メカニズムは全く異なり,sNPHは髄液汚染による吸収障害であり,iNPHは吸収機構そのものの機能低下と考えた.iNPHでは,諸々の髄液吸収機構の機能低下が散在性に起こり,そのため左右非対称の髄液循環不全が生じDESHが発生するのではないかと推測している.