自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
59 巻, 1 号
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特別講演
  • Kuroiwa Yoshiyuki, Hirai Toshiaki, Yokota Shumpei, Nakasato Naomi, Suz ...
    2022 年 59 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    The various environmental stresses can be broadly divided into external environmental stress and internal environmental stress. The hypothalamus controls the homeostasis of the internal environment. Environmental stress hypersensitivity and environmental stress intolerance are not opposing concepts, but rather the same condition viewed from the front or the back, and are clinical conditions, hypothalamic stress intolerant and exhaustive syndrome or circumventricular organs dysregulation syndrome. This syndrome is characterized by the multilayered appearance in individual patients of autonomic symptoms, affective/cognitive symptoms, pain/sensory hypersensitivity symptoms, and immune hypersensitivity symptoms. Typical diseases that cause this syndrome include cerebrospinal fluid leak, myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome, fibromyalgia, multiple chemical sensitivity, and HPV vaccination-associated neuroimmune disorder syndrome (HANS). The hypothalamus covers multidimensional biological functions such as circadian rhythms, autonomic functions, immune responses, endocrine functions, instinctive behaviors, thermal energy metabolism (deep body temperature, nutrient metabolism), emotion and memory, pain and sensory thresholds, gait and movement, and circulatory dynamics. The hypothalamus, with its complex control circuits, surprisingly consists of a very simple bipolar system: emergency mode (sympathetic, short-distance race type) and normal mode (parasympathetic, long-distance race type). Traumatic events in cerebrospinal fluid leak, inflammatory events in myalgic encephalomyelitis/chronic fatigue syndrome and fibromyalgia, massive chemical exposure events in multiple chemical sensitivity, and HPV vaccination events in HANS, are assumed to be pathogenic factors, resulting in a similar clinical picture via some “common pathway”. The “common pathway” of hypothalamic stress intolerant and exhaustive syndrome at the molecular pathological level remains to be elucidated.

  • 伊藤 剛
    2022 年 59 巻 1 号 p. 10-15
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    これまで単一の病態と考えられていた冷え症の冷えは,体表の温度分布や体内温度勾配のパターンに基づき,下半身型,四肢末端型,内臓型,全身型の基本4型と,局所型,混合型を合わせ6タイプに分類された.この冷えの基本4型の自律神経バランスを調べると,下半身型は下肢末梢の交感神経緊張と,のぼせのある場合は中枢の副交感神経優位を示し,四肢末端型は末梢の交感神経過緊張と中枢の交感神経優位,内臓型は末梢の交感神経弛緩と中枢の副交感神経優位,全身型は中枢の交感神経優位を認めた.こうした自律神経機能の差が,熱産生,熱移動,熱放散の熱出納バランスなどに影響し,様々な冷え症の病態を生み出していると考えられる.

教育講演
  • 黒澤 美枝子, 半田 直子
    2022 年 59 巻 1 号 p. 16-22
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    触刺激時の循環反応について動物とヒトにおける研究を紹介した.麻酔下並びに意識下の動物,意識下のヒトにおいて触刺激はいずれも動脈圧と心拍数を低下させた.背部皮膚への触刺激時の心拍数低下は麻酔下動物,意識下ヒトともに交感神経活動低下と副交感神経活動上昇によるものであった.ヒトでは温熱+触刺激は触単独刺激時の心拍数反応を延長させたが,麻酔下の動物では温熱刺激の効果は認められなかった.温熱+触刺激は触刺激単独の場合より心地よさのスコアが高かったことより,温熱刺激は主に情動に影響を与えることにより心臓支配の自律神経に影響を与える可能性が示唆された.

  • 横田 翔平, 此内 緑, 朔 啓太
    2022 年 59 巻 1 号 p. 21-26
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    日常の多くの外乱にも関わらず,循環は自律神経による強力な制御機構によって恒常性が維持されている.一方,さまざまな循環器疾患において同制御機構は破綻している.現在,神経活動に電子的介入をすることで恒常性破綻を是正するニューロモデュレーション医療機器の開発が世界的な潮流となっている.病態における自律神経性循環制御の重要性や基礎研究結果からニューロモデュレーションに寄せられる臨床からの期待は大きいが,さまざまな課題も明らかとなってきている.本項では,循環器疾患治療を目的としたニューロモデュレーション医療機器の現状と課題を整理する.

シンポジウム
  • 水越 厚史, 北條 祥子, 黒岩 義之, 東 賢一, 中間 千香子, 奥村 二郎
    2022 年 59 巻 1 号 p. 28-36
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    環境過敏症は,健常人では問題にならない僅かなレベルの化学物質への曝露や物理的影響などの環境因子により,全身の様々な症状が生じる病態である.その病因や症候の底流となる機序を解明し,予防や発症,治療法に関する環境・医学的対策情報を得ることが急務と考える.そのためには,問診票により患者から訴えの実態を把握し,その発症や症状発現の誘因となりそうな環境因子を明らかにする必要がある.本報では,環境過敏症の疫学調査のために世界的に使われてきた国際共通問診票の特徴を整理し,疫学調査に必要な質問項目について検討した.国際共通問診票の特徴は,様々な種類の環境因子や症状発現について網羅的に質問している点にある.近年の環境の変遷速度を考慮すると,新たな環境因子を継続的に探索できる問診票の出現が望まれる.調査結果をフィードバックし,問診票をアップデートしつつ,環境過敏症の課題解決に向けて努力していきたい.

  • 北條 祥子, 水越 厚史, 黒岩 義之
    2022 年 59 巻 1 号 p. 37-50
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    環境過敏症(環境不耐症)は日常生活の外的環境刺激に対する感覚過敏症状(光過敏,音過敏,臭い過敏,気圧過敏,化学物質過敏,電磁過敏)に加えて,自律神経・内分泌症状,免疫・アレルギー症状,慢性疼痛,慢性疲労,記憶・情動障害などの多彩な全身症状を特徴とする健康障害の総称であり,アレルギー疾患と密接な関係がある.代表例として,シックハウス症候群(SHS),化学物質過敏症(MCS),電磁過敏症(EHS)が挙げられる.近年,先進国を中心に,患者の急増が問題視されており,早急な病態解明や予防対策が求められている.北條は,約30年間,環境過敏評価用世界共通問診票の日本語訳版を作成して,日本の環境過敏症患者の実態調査を実施してきた.本稿では,環境過敏症の最新知見および筆者が実施してきた日本の環境過敏症患者の疫学調査結果の一部を紹介をしながら,環境過敏症の病態解明や発症予防に関する今後の展望について考える.

  • 横田 俊平, 黒岩 義之
    2022 年 59 巻 1 号 p. 51-59
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    身体症状を呈し登校障害を主訴に受診した学童・生徒28名の身体症状の特徴を調査した.「朝の起床困難」は睡眠障害に加えて身体感覚とそれを調整する中枢機能の障害が,「睡眠障害」は視床下部の概日リズム制御破綻が推察された.「だるさ,易疲労感」は身体的homeostasisの障害に対して視床下部のエネルギー代謝促進系の抑制的制御が機能していない状態が考えられ,内的・外的ストレスに対する調節機能の障害が推察された.「腹痛・吐き気・下痢」などは機能性dyspepsia,過敏性腸症候群などが考えられ,感覚系では視覚・聴覚・嗅覚などに過敏状態を認めた.診察では諸筋の硬化・圧痛を認め,若年性線維筋痛症にみられる18圧痛点が全例で陽性であり登校障害児には視床下部・辺縁系の障害が推定された.成人の線維筋痛症ではFDG-PETにより視床周囲領域に炎症の存在が指摘されている.登校障害児においても同様の病巣の存在が推察され,併せて諸外国の報告をまとめた.

  • 平井 利明, 黒岩 義之
    2022 年 59 巻 1 号 p. 60-71
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)では環境過敏が特徴である.初回接種から8.5年間という世界に類を見ない追跡調査を行った.HANSのADLは3.5~4年で最も悪化し,29%の例が光過敏でサングラスをかけた.ADL重症群では副交感神経機能と血管内皮機能の機能低下を認めた.重度の環境過敏を伴うHANSでは発作的異常運動・頻脈・散瞳,血糖調節障害が著明で,脳脊髄液漏出症に対する治療や免疫治療で症状が一時的に改善した.テロメアG-tailは10例全てで短縮し,micro RNA検査で子宮頸癌及び乳癌の高リスクが8例中に4例に認められ,HANS患者は染色体レベルでの異常を起こしていることが世界で初めて示された.HANSはウイルス様粒子による血管内皮障害,染色体やmicro RNA異常を伴う視床下部性ストレス不耐・疲労症候群と言える.同病態を呈する他疾患のスペクトラムについても考察した.

  • 黒岩 義之, 平井 利明, 水越 厚史, 中里 直美, 鈴木 高弘, 横田 俊平, 北條 祥子
    2022 年 59 巻 1 号 p. 72-81
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    環境ストレスには物理的感覚ストレス,化学的感覚ストレス,免疫・凝固系ストレス,心理社会的ストレス,内部環境ストレスがある.環境ストレスに対して生体が過敏症(ストレス感覚入力系の過敏状態)や不耐症(ストレス反応出力系の不全状態)を呈する病態を環境ストレス過敏症(不耐症)と定義した.その病像は視床下部性ストレス不耐・疲労症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)であり,自律神経・内分泌・免疫症状,筋痛,疲労,記憶障害等の多彩な症状が重層的に起こる.基礎疾患が明らかでない特発性タイプと,筋痛性脳脊髄炎・慢性疲労症候群,脳脊髄液漏出症,HPVワクチン後遺症,COVID-19後遺症,シックハウス症候群,ネオニコチノイド暴露など,基礎疾患が明らかな症候性タイプがある.3ステージ仮説(遺伝的要因,発症要因,トリガー要因)に基づき,その病態や予防について論じた.分子病態仮説としてプリン作動性神経伝達障害を考えた.

  • 内田 さえ
    2022 年 59 巻 1 号 p. 83-87
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    鍼刺激が大脳皮質血流に及ぼす効果とその反応へのコリン作動性血管拡張系の関与について,とくに前肢刺激と耳介刺激の比較や加齢変化に着目した基礎研究を紹介する.麻酔下の成熟ラットにおいて,前肢足蹠の鍼刺激は血圧上昇を伴って大脳皮質血流を増加させる.一方,耳介の鍼刺激は血圧に影響することなく皮質血流を増加させる.いずれも求心路は刺激部位に分布する体性求心性神経である.前肢刺激による血流増加は,大脳皮質アセチルコリン(ACh)放出増加を伴い,脳内ACh受容体(ムスカリンとニコチン受容体)を介することから,頭蓋内コリン作動性血管拡張系の関与が示唆される.老齢ラットでは,ニコチン受容体(α4β2型)機能が低下するもののムスカリン受容体機能は維持され,前肢鍼刺激による大脳皮質血流増加反応は保たれる.血圧への影響が少ない耳介刺激は臨床適用しやすいと考えられる.

  • 菊池 友和, 山口 智, 荒木 信夫
    2022 年 59 巻 1 号 p. 88-91
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    日本の慢性疼痛のガイドライン 2021 では,「統合医療」の項で、「鍼灸治療は慢性疼痛に有用か?」というクリニカル・クエスチョン(CQ)で推奨度は2(弱):施行することを弱く推奨する(提案する)、とあり、慢性片頭痛や慢性緊張型頭痛などにも推奨され始めている。慢性疼痛患者に対する鍼治療効果を脳イメージングを用いた手法により,検討した結果、慢性片頭痛では初回では反応しなかった下行性疼痛調節系の部位が4週間継続して鍼治療を行うことで、賦活した。さらに慢性腰痛ではシャム鍼と比較し、真の鍼で脳活動部位に差異が認められ、痛み軽減も有意に真の鍼の方が高かった。このように慢性疼痛患者に対する鍼治療効果は、脳の疼痛関連領域にも影響がある可能性が示された。

  • 二本松 明
    2022 年 59 巻 1 号 p. 96-100
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    合谷穴への鍼刺激による第一背側骨間筋の誘発筋電図F波(振幅F/M比)と,第一背側骨間筋部の局所酸素飽和度(regional oxygen saturation:rSO2)の変化との関連について述べた.鍼刺激は,合谷穴(第2中手骨の中点にある経穴)へ太さ0.18 mmの鍼を深さ10 mm刺入した.合谷穴に鍼刺激を行うと第一背側骨間筋の振幅F/M比が増加し,同部位のrSO2は増加した.また鍼刺激開始30秒後について振幅F/M比とrSO2の間に関連を認めたが,150秒後,300秒後の関連については有意なものではなかった.鍼刺激開始30秒後の運動神経の興奮と筋血流量の増加は,鍼刺激の感覚情報が高次中枢を介して同期して惹起された現象が主に関与するものと考えられ,鍼刺激150秒後,300秒後の変化については,運動神経の興奮と,筋血流量の増加がそれぞれ別個に惹起された現象が主に関与するものと考えられた.

  • 田村 直俊
    2022 年 59 巻 1 号 p. 105-109
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    Schaltenbrand(1936,53))は,脳脊髄液(CSF)が脈絡叢由来の液体と血管周囲腔由来の液体の混合物であること(二元産生説),CSF減少症が自律神経の異常によるCSF産生低下で生じることを記述した.Edvinssonら(1972,73)は,脈絡叢におけるadrenaline作動性とcholine作動性の二重神経支配を確認した.Pappenheimerら(1962)はトレーサーを加えた液体でCSF腔を灌流して,トレーサーのクリアランスからCSF産生量を算出する方法を考案し,Haywood(1976),Lindvallら(1978)は本法を用いて,交感神経刺激でCSF産生が低下することを示唆した.しかし,本法はCSFの産生部位が脈絡叢だけであるという誤った前提(一元産生説)によっていることが指摘されたので,1980年代以降,CSF産生の自律神経制御を検討した報告はない.

  • 三浦 真弘, 内野 哲哉, 山田 茂樹
    2022 年 59 巻 1 号 p. 110-124
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    最近,産生機序が混在する髄液・間質液はまとめてneurofluidと呼ばれている.Neurofluidの循環動態を理解することは臨床上重要である.中枢神経ではリンパ管が欠如する.脳領域では微小血管,glymphaticシステムとintramural peri–arterial drainage pathwayを介して髄膜リンパ管からneurofluidや代謝物が排出され.一方,脊髄領域では,epidural lymphatic vesselsを介する吸収システムが髄液圧調節に働いており,リンパ管吸収には篩状斑が不可欠である.通常,各神経根において髄液が自然浸潤することから,同部は広義のくも膜下腔であると共に髄液の生理的貯留槽と考えられる.中枢神経系の水収支バランスは,prelymphatic channelの構造特徴と連関するepidural lymphatic networksの生後発達・加齢退縮に影響される.

  • 山田Merrit 昌興, 中根 一, 冨田 雄介, 竹田 理々子, 平井 利明, 馬場 泰尚, 黒岩 義之
    2022 年 59 巻 1 号 p. 125-131
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    画像技術の進歩により脳脊髄液循環動態に関する新たな事実が判明し,それに伴い特発性正常圧水頭症(iNPH)の病態も盛んに研究されているが未だ不明な点が多い.著者らの施設にてシャント手術を要した続発性正常圧水頭症(sNPH)には,画像上iNPHに特徴的とされるSylvius裂の開大やDESHを認めた症例はない.術後,sNPHは全例で画像所見の改善と臨床症状の回復を認めたのに対し,iNPHでは画像所見の明らかな改善を認めないにも関わらず臨床症状の回復を認めた症例を少なからず認めた.この結果から,髄液の吸収障害で生じるiNPHとsNPHの病態メカニズムは全く異なり,sNPHは髄液汚染による吸収障害であり,iNPHは吸収機構そのものの機能低下と考えた.iNPHでは,諸々の髄液吸収機構の機能低下が散在性に起こり,そのため左右非対称の髄液循環不全が生じDESHが発生するのではないかと推測している.

  • 中里 直美, 北條 祥子, 菅野 洋, 鈴木 高弘, 平井 利明, 横田 俊平, 黒岩 義之
    2022 年 59 巻 1 号 p. 132-143
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    脳脊髄液減少症(脳脊髄液漏出症)は交通事故やスポーツ外傷のような外傷性の発症イベントに引きつづき,多彩な全身的体調不良がみられる後天的な慢性疾患であるが,発症イベント要因が不明なこともある.本症は脊髄神経根部での脳脊髄液の漏出(吸収過多)で起こるといわれているが,その病態に関しては不明な点が多い.4つの中核症状(自律神経症状,情動・認知症状,疼痛・感覚過敏症状,免疫過敏症状)が個々の患者で重層的に起こる.本症には性差があり,女性の方が男性よりも各症状の出現頻度や重症度が高い.本症は環境ストレスに対して生体が過敏症(ストレス感覚入力系の過敏状態)や不耐症(ストレス反応出力系の不全状態)を呈する.本症と筋痛性脳脊髄炎/慢性疲労症候群,子宮頚癌ワクチン副反応,COVID-19慢性後遺症との類似性が注目され,それらの病像は視床下部性ストレス不耐・疲労症候群(脳室周囲器官制御破綻症候群)といえる.

ミニレビュー
  • 渡辺 信博, 飯村 佳織, 堀田 晴美
    2022 年 59 巻 1 号 p. 151-156
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    アルツハイマー病(AD)は,脳実質内(神経細胞周囲)にアミロイドβ(Aβ)が異常蓄積することが引き金となって生じると考えられている.近年ではまた,一過性脳虚血などの脳血管障害もADの危険因子のひとつに挙げられている.脳の神経細胞は虚血に脆弱であるが,血管拡張神経を刺激し脳虚血の程度を軽減させると,傷害されるニューロンの数が減少する.すなわち,虚血時の脳血管反応はADの病態に影響を及ぼすと推測される.Aβは脳実質内に加えて,脳表面を走行する軟膜動脈周囲にも蓄積することが知られている.本稿では,Aβ蓄積による脳血管機能への影響について,著者らの研究を含めながら紹介する.

原著
  • 越川 浩明, 栗田 正, 鈴木 仁, 作石 かおり
    2022 年 59 巻 1 号 p. 157-164
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/04/23
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病(PD)では早期から自律神経(ANS)障害を,進行期に幻視(VHs)を認める.VHsには視覚情報処理(VIP)障害の関与が指摘され,障害はPD早期から始まる可能性がある.本研究では早期PDのVIPとANS障害の関係を調べた.対象はHoehn & Yahr 2迄のPDと対照(C)群各20名.VIP機能はVHs問診票,ノイズパレイドリア試験(NPT),視覚性事象関連電位P3潜時で,ANS機能はThe scales for outcomes in PD-autonomic questionnaire(SCOPA-AUT),心拍血圧変動解析(HBVA)で評価した.PD群はC群に比べ一部にVHsやNPT異常を認めP3潜時が延長傾向を示した.SCOPA-AUTはPD群で有意に高得点だったがHBVAに差はなかった.一部のPD症例でVIPとANS障害が併存したが,両障害に有意な関係は無かった.

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