2022 年 59 巻 1 号 p. 60-71
HPVワクチン関連神経免疫異常症候群(HANS)では環境過敏が特徴である.初回接種から8.5年間という世界に類を見ない追跡調査を行った.HANSのADLは3.5~4年で最も悪化し,29%の例が光過敏でサングラスをかけた.ADL重症群では副交感神経機能と血管内皮機能の機能低下を認めた.重度の環境過敏を伴うHANSでは発作的異常運動・頻脈・散瞳,血糖調節障害が著明で,脳脊髄液漏出症に対する治療や免疫治療で症状が一時的に改善した.テロメアG-tailは10例全てで短縮し,micro RNA検査で子宮頸癌及び乳癌の高リスクが8例中に4例に認められ,HANS患者は染色体レベルでの異常を起こしていることが世界で初めて示された.HANSはウイルス様粒子による血管内皮障害,染色体やmicro RNA異常を伴う視床下部性ストレス不耐・疲労症候群と言える.同病態を呈する他疾患のスペクトラムについても考察した.