2022 年 59 巻 1 号 p. 96-100
合谷穴への鍼刺激による第一背側骨間筋の誘発筋電図F波(振幅F/M比)と,第一背側骨間筋部の局所酸素飽和度(regional oxygen saturation:rSO2)の変化との関連について述べた.鍼刺激は,合谷穴(第2中手骨の中点にある経穴)へ太さ0.18 mmの鍼を深さ10 mm刺入した.合谷穴に鍼刺激を行うと第一背側骨間筋の振幅F/M比が増加し,同部位のrSO2は増加した.また鍼刺激開始30秒後について振幅F/M比とrSO2の間に関連を認めたが,150秒後,300秒後の関連については有意なものではなかった.鍼刺激開始30秒後の運動神経の興奮と筋血流量の増加は,鍼刺激の感覚情報が高次中枢を介して同期して惹起された現象が主に関与するものと考えられ,鍼刺激150秒後,300秒後の変化については,運動神経の興奮と,筋血流量の増加がそれぞれ別個に惹起された現象が主に関与するものと考えられた.