2022 年 59 巻 4 号 p. 366-370
迷走神経と言えば中枢から末梢臓器への投射がよく知られているが,実は末梢の情報を中枢に伝える求心性線維の方が割合は多い.この求心性の連絡を刺激する迷走神経刺激療法は,難治性てんかんの緩和療法やうつ病の治療としても用いられている.最近の研究では,脳病態治療効果があるだけではなく,迷走神経刺激が脳内の神経可塑性を生み出し脳内環境に変動を与えることで,学習やリハビリの促進にもつながるとの報告がなされている.このような脳内環境変化に,神経細胞ともにグリア細胞機能も関わっている可能性が示唆されている.末梢からの中枢脳内環境制御の研究は,てんかんに限らず,幅広い脳病態の新たな治療方法として期待されている.