自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
59 巻, 4 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
特別講演
  • 髙村 毅, 横尾 隆
    2022 年 59 巻 4 号 p. 335-337
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
    ジャーナル フリー

    慢性腎不全に対する根本的な治療は腎移植であるが,ドナー不足あるいは生涯にわたる免疫抑制剤内服の必要性など大きな問題が存在する.これらの問題を解決できる方法として腎臓再生医療が注目されている.ここ数年で多能性幹細胞から各種腎臓前駆細胞の誘導が可能になり,誘導した前駆細胞を組み合わせることで高次構造をもつ腎臓構築も可能になった.また,動物の発生過程を利用し再生臓器を創出する試みでは血管や尿路が入り込んだキメラ腎臓を作ることが可能となっている.本稿ではこれらのアプローチ方法の進歩と問題について解説する.

基礎と臨床の対話
  • 中村 友彦
    2022 年 59 巻 4 号 p. 339-343
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
    ジャーナル フリー

    起立性低血圧はパーキンソン病の非運動症状の代表的な症状の1つである.起立性低血圧を伴うパーキンソン病は認知機能障害を来しやすく,また運動症状の進行が早く生命予後も不良とされ,その対策は重要である.心臓交感神経障害は起立性低血圧を来す主要な要因の一つである.パーキンソン病発症メカニズムとして最初のα-シヌクレイン変化は腸管から始まり逆行性に迷走神経を介して中枢へ広がる経路が提唱されている.心臓に関しては,交感神経系を介して腸管から逆行性に腹腔神経節,そこからシナプスを介して交感神経幹によって星状神経節に達し,心臓へ到達することが実験的にも証明されている.さらにはα-シヌクレイン病理は心臓交感神経を介して逆行性に中枢へ広がっていく可能性もあり,パーキンソン病発症の病態を考えるうえでも今後の研究の発展が望まれる.

  • 武田 憲彦
    2022 年 59 巻 4 号 p. 346-348
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
    ジャーナル フリー

    心臓はポンプとして全身に血液を駆出しており,その機能低下は致死的病態である心不全を引き起こす.心不全病態では炎症プロセスが活性化し,心筋組織にマクロファージが浸潤するが,その病態プロセスは未だ不明である.我々は低酸素環境で活性化する転写因子であるHypoxia inducible factor(HIF)に着目し,炎症プロセスおよび心臓リモデリングにおける役割を検証してきた.その結果HIFシグナルがマクロファージ遊走,活性化を促進し,心臓における炎症プロセスにおいて重要な役割を果たしている事が判ってきた.本稿では低酸素シグナルに着目し,その心臓リモデリングにおける役割について紹介する.

レクチャーズ
  • 星野 歩子
    2022 年 59 巻 4 号 p. 350-353
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
    ジャーナル フリー

    エクソソームとは全ての細胞が産生する30-150 nmの微小胞で,元々は細胞のゴミ処理機構として認識されていた.しかし,近年になり放出されたエクソソームが他の細胞へ取り込まれることがわかり,新たな細胞間コミュニケーションツールとして着目されている.エクソソームにはタンパク質や核酸,脂質等が含まれており,末梢血中のエクソソームから得られるそれらの情報は体内状態を反映し,多くの疾患バイオマーカーとして期待されている.今回私は,エクソソーム含有タンパク質に特に着目し,末梢血中エクソソームのタンパク質組成が診断マーカーとなる可能性,そしてがん細胞が産生するエクソソームががんの臓器特異的転移に関わる機構について紹介する.

  • 木場 智史, 奈良井 絵美
    2022 年 59 巻 4 号 p. 354-357
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
    ジャーナル フリー

    運動時には骨格筋での代謝需要量が増加するため,循環系を適切に調節する必要がある.その調節を迅速に担うのが自律神経系であり,交感神経活性と副交感神経抑制により心拍出量・心拍数増加や血圧上昇が起こる.収縮骨格筋より生じる運動昇圧反射と運動発現の意思として高位中枢で生じるセントラルコマンドとが運動時の自律神経系を制御する.心理ストレス時にも自律神経性の生理反応が起こるが,運動時の調節機構とは異なる.本稿では,過去から現在までの先駆的な研究を俯瞰し,運動時や心理ストレス時における自律神経制御機構を考察する.

総説
ミニレビュー
  • 生駒 葉子, 松井 広
    2022 年 59 巻 4 号 p. 366-370
    発行日: 2022年
    公開日: 2022/12/21
    ジャーナル フリー

    迷走神経と言えば中枢から末梢臓器への投射がよく知られているが,実は末梢の情報を中枢に伝える求心性線維の方が割合は多い.この求心性の連絡を刺激する迷走神経刺激療法は,難治性てんかんの緩和療法やうつ病の治療としても用いられている.最近の研究では,脳病態治療効果があるだけではなく,迷走神経刺激が脳内の神経可塑性を生み出し脳内環境に変動を与えることで,学習やリハビリの促進にもつながるとの報告がなされている.このような脳内環境変化に,神経細胞ともにグリア細胞機能も関わっている可能性が示唆されている.末梢からの中枢脳内環境制御の研究は,てんかんに限らず,幅広い脳病態の新たな治療方法として期待されている.

feedback
Top