2023 年 60 巻 1 号 p. 42-48
Ehlers-Danlos症候群(EDS)・体位性頻脈症候群(PoTS)・脳脊髄液(CSF)減少症が相互に共存するという成績が集積している.EDSとPoTSの共存については,EDSは静脈の伸展性過大があり,起立時に過剰の血液が下半身の静脈系に貯留する,EDSとCSF減少症の共存については,EDSの組織脆弱性がCSF漏出をもたらすとされているが,圧倒的多数のEDSは静脈の伸展性過大,組織の脆弱性を認めない(関節過可動症候群).Sharpら(2021)は,EDSとPoTSの共存例には内受容感覚に異常があり,中枢自律神経線維網(CAN)で異常な情動と自律神経活動が惹起されると説明した.EDS患者は発育段階から,異常な深部感覚のインパルスが持続的にCANに入力している.本稿では,EDS・PoTS・CSF減少症の共存は内受容感覚の異常で一元的に説明可能であるとする仮説を提唱する.