自律神経
Online ISSN : 2434-7035
Print ISSN : 0288-9250
60 巻, 1 号
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基礎と臨床の対話
  • 梅原 淳
    2023 年 60 巻 1 号 p. 2-5
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病(PD)の自律神経障害は,PD前駆期から始まり疾患発症を予測する臨床的バイオマーカーとして有用である.またαシヌクレインの伝播には,脳幹上行仮説における迷走神経だけでなく,交感神経路も重要な役割を果たしている可能性がある.PDの起立性低血圧(OH)は,末梢交感神経だけでなく中枢交感神経障害に起因すると推測され,認知機能低下とも密接な関係を持つ.OHの治療には,附随する臥位性高血圧の存在を考慮し,非薬物療法を十分実施することが必要である.一方,薬物治療では昇圧剤の内服だけでなく,交感神経節前線維機能を高める抗コリンエステラーゼ薬の併用が有効と思われる.

  • 米代 武司
    2023 年 60 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    褐色脂肪組織(BAT)は寒冷刺激に応じて活性化して適応的熱産生を行う脂肪組織であり,マウスでは体温調節に不可欠である.ヒトにおいてもBATは急性寒冷刺激により活性化して寒冷誘導熱産生に寄与し,慢性寒冷刺激により増量することで寒冷適応に関与する.最近のマウスを用いた研究により,BATによる効率的な熱産生には分岐鎖アミノ酸(BCAA)の利用が不可欠であること,BATは心理ストレスによっても活性化してBCAAを活発に消費しながら発熱応答にも関与することが明らかになった.今後,ヒトでの検証が進み,BATの体温調節やエネルギー代謝調節,ストレス耐性に対する生理的意義の解明が進むことが期待される.

  • 狩野 修, 渋川 茉莉, 柳橋 優, 平山 剛久, 森岡 治美
    2023 年 60 巻 1 号 p. 16-19
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    筋萎縮性側索硬化症(Amyotrophic lateral sclerosis: ALS)は,上位と下位運動ニューロンが選択的に障害されるシンプルな病気と考えられているが,運動系以外である自律神経障害を呈した報告も散見される.しかし,ALSの自律神経障害を病理学的に明確に説明できるエビデンスは乏しい.そのため視床下部なども含めた中枢自律神経線維網と脊髄中間外側核などとのバランス,障害の優劣で自律神経障害が出現していると推測される.ALSに対するサイバニック治療では,下肢運動機能の維持が観察された.ADL維持期間や生命予後延長も含めた長期的な効果の検討が今後の課題である.

総 説
  • 田村 直俊, 光藤 尚
    2023 年 60 巻 1 号 p. 42-48
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    Ehlers-Danlos症候群(EDS)・体位性頻脈症候群(PoTS)・脳脊髄液(CSF)減少症が相互に共存するという成績が集積している.EDSとPoTSの共存については,EDSは静脈の伸展性過大があり,起立時に過剰の血液が下半身の静脈系に貯留する,EDSとCSF減少症の共存については,EDSの組織脆弱性がCSF漏出をもたらすとされているが,圧倒的多数のEDSは静脈の伸展性過大,組織の脆弱性を認めない(関節過可動症候群).Sharpら(2021)は,EDSとPoTSの共存例には内受容感覚に異常があり,中枢自律神経線維網(CAN)で異常な情動と自律神経活動が惹起されると説明した.EDS患者は発育段階から,異常な深部感覚のインパルスが持続的にCANに入力している.本稿では,EDS・PoTS・CSF減少症の共存は内受容感覚の異常で一元的に説明可能であるとする仮説を提唱する.

ミニレビュー
  • 濱田 康宏, 出口 一志
    2023 年 60 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    自律神経障害を来す疾患の一部に,自己免疫性の機序で自律神経系のみを障害するものがある.抗ガングリオニックアセチルコリン受容体抗体が陽性の自己免疫性自律神経節障害では,自律神経節でシナプス伝達が阻害され広範な自律神経障害が生じる.本抗体の測定方法として受容体の細胞外エピトープを標的とする免疫調節法やlive cell-based assay法が新たに報告され,抗体検索の特異度改善が期待される.類似の臨床像で本抗体が陰性の例もあるが,その機序は未解明である.抗体陰性例では免疫グロブリン大量静注療法や血漿交換よりステロイドパルス療法が有効で,細胞性免疫の機序の可能性がある.多数例で治療効果判定を含めた疫学研究が望まれる.

原 著
  • ―Reflexologyの神経性機序の検討―
    成島 朋美, Noraini Azlin Binti Mohd Amin, 志村 まゆら, 野口 栄太郎
    2023 年 60 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/04/03
    ジャーナル フリー

    足底を対象とする手技療法は,「リフレクソロジー」や「足ゾーン・セラピー」など様々な名称で呼ばれ,補完代替医療の一つとして世界各国で行われている.しかし,その効果の機序となる基礎医学的検討はほとんど行われておらず,名称の由来となる反射の存在も確認されていない.そこで我々は,足底の限局した部位への圧刺激の血圧・心拍数および胃内圧に対する反応を指標に,その神経性機序と特異的な反射区の存在を確認する目的で実験を行った.求心路および遠心路の神経切断結果から,足底点状圧刺激は体性感覚神経から入力され,複数の自律神経を遠心路とした反射性反応を誘発することが明らかとなったが,反射区の存在を明らかとすることは出来なかった.

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