体位性頻脈症候群(PoTS)の研究史を展望すると,その本態は理論的には解明済みである.現在のPoTSは英語圏のDa Costa症候群(1871),ドイツ語圏の迷走神経症(1892)・植物神経緊張異常(1934),スウェーデンの動脈性起立性貧血(1927)に相当する.英語圏・ドイツ語圏では,自律神経活動と情動の異常が共存する病態(心身症)と認識されていたが,心身症の解釈は両言語圏で異なり,前者では自律神経活動が情動の影響を受ける,後者では内受容感覚によって自律神経活動と情動が同時に惹起されると理解されていた.スウェーデンでは情動の問題を棚上げし,静脈循環の異常による静脈貯留症候群と説明されていた.現在,PoTSの情動異常が再認識され,原因として内受容感覚の異常が注目されている.内受容感覚の異常(亢進?)を想定すれば,PoTSの循環動態も心肺圧受容器反射のunloading過大で説明できる.